営農型太陽光発電の種類とO&Mの重要性|発電効率と農作業を両立する設計・運用とは

営農型太陽光発電の種類とO&Mの重要性|発電効率と農作業を両立する設計・運用とは

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、農地を守りながら発電で新たな収益を生み出す仕組みです。田畑や牧草地の上空を有効利用し、作物栽培や畜産を継続しつつ電力を自家消費・売電することで、収益の安定化や地域の脱炭素に貢献します。

ただ一方で、単にパネルを設置すればよいわけではなく、「農業を継続できる設計」と「導入後の運用・保守(O&M)」が両立して初めてその価値を発揮します。

そこで本記事では、代表的な設置方式(藤棚式・垂直式・追尾式)の特徴と、それぞれで留意すべきO&Mポイントを解説します。さらに、営農型導入の前提要件や継続的な義務にも触れ、実際に現場で長期にわたり農業と発電を両立させるための実務的な視点も示します。

そもそも営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、農業(耕種・畜産問わず)を行うエリアに太陽光発電設備を設置して、農業は従来通り営みながら、太陽光発電も行う取り組みです。農活動を最優先に行いつつ、発電事業によって農業経営の安定化を図ることを目的としています。

また農作物の栽培や家畜の飼育など、従来通りの営農を維持しながら、太陽光パネルで発電した電力を自家消費したり売電したりして、農業経営の新たな収益源につなげることも可能です。

さらに不作や市場価格の変動による収益のリスクや不安を軽減できるため、農業離れの抑制も期待されます。こうした背景から、農林水産省でも農業経営の改善を期待できる取り組みとして位置付けており、全国的に広がりを見せています。

1-1. 営農型太陽光発電の前提要件と継続的な義務

営農型太陽光発電を導入する際には、農地転用許可(一時転用許可)を取得する必要があります。この許可制度には、農業を適切に継続するための厳格な条件が設けられており、発電事業を名目に農地を放置することは認められていません。

農地転用許可の条件として、毎年1回、営農状況の報告が義務付けられています。この報告では、以下のような内容の確認が行われます。

  • 作物の種類と作付面積
  • 年間の収穫量
  • 営農の継続状況
  • 太陽光発電設備による営農への影響

なお毎年提出する収量報告において、「営農が適切に行われていない」と判断された場合には「改善勧告」が出され、改善が見られなければ太陽光発電設備の撤去命令が下される可能性がある点は留意しましょう。

営農型太陽光発電の主要3種類と特徴

営農型太陽光発電には複数の設置方式がありますが、ここでは農地での導入実績が多い主要な3種類について、それぞれの特徴とO&M(運用・保守)における留意点を解説します。

なお、これら以外には野立て式の太陽光パネルの支柱を高くしたシンプルな構造(足高式)を採用するケースも見受けられます。

2-1. 藤棚式の特徴

藤棚式は、格子状に組み上げられた梁に太陽光パネルを規則的に設置し、支柱で支える営農型太陽光発電における最も一般的な方式です。藤棚に似た構造をしていることから、このように呼ばれています。支柱で約3mの営農可能な高さを確保し、間隔を空けて配置された太陽光パネルの屋根の下で農作業を行います。

2-1-1. 藤棚式のメリット

藤棚式の主なメリットは、以下の通りです。

・作物に対する過度の日照を防ぎ、人の避暑にもなる
農地の上部に棚状の構造を設けることで、作物に対して適度な日陰を提供します。また、棚の下は人にとっても避暑効果があり、夏場の農作業を行いやすくなります。このように、藤棚式は作物と作業者の両方に対して、過酷な日照条件を和らげる点がメリットです。

・事例が多い
現状として最も一般的な方式であり、多くの農家や地域で導入されています。そのため導入を検討する際に参考にできる事例が多く、他の方式と比較して「リスクを低減しやすい」「適切な設計や運用を把握しやすい」といった点はメリットです。

2-1-2. 藤棚式の注意点

藤棚式は上部に屋根のように配置された太陽光パネルや一定間隔で支柱が並んでいるため、大型の農業機械の導入は困難です。高さや幅に適した農業機械の導入、支柱をうまくよけながらの作業も求められます。

なお積雪地では、雪によってパネル表面が覆われてしまうと発電ができない場合や、雪の荷重を受けやすい場合もある点は留意しましょう。

また、藤棚式は支柱の数が多く、定期点検の際には多くの箇所を確認する必要があります。加えて、パネルの清掃やメンテナンスを行う際には高所作業が必要であり、安全対策が欠かせません。こうした作業の複雑さから、定期点検・清掃コストが増加傾向にあります。支柱の腐食や架台の劣化、ボルトの緩みなど、定期的な点検項目が多岐にわたる点を考慮したO&M計画が必要です。

2-2. 垂直式(縦型)の特徴

垂直式は、太陽光パネルを地面に対して垂直に設置する方式の営農型太陽光発電です。この方式では、農機や農地の形状に併せてパネルの間隔を設定でき、垂直式の太陽光パネルが立つ場所以外は広く作業スペースを確保できるため、農作業の動線を妨げにくく、大型の農業機械での作業が必要な農地への導入にも適しています。

2-2-1. 垂直式のメリット

垂直式のメリットは、以下の通りです。

・限られたスペースでも設置可能
太陽光パネルを農地に対して垂直に設置するため、限られたスペースでもパネルを配置しやすく、農地全体を占有することなく発電可能です。

・積雪に強い
太陽光パネルが垂直に設置されているため、雪が積もりにくいというメリットがあります。パネルが雪で覆われにくく、冬季でも安定した発電が可能です。また、地面に雪が積もったとしても、上部に設置されたパネルは影響を受けにくい構造のため、積雪が多い地域でも導入が可能です。

・地面反射光による発電を期待できる
地面からの反射光による発電も期待できます。地面に降り注ぎ、照り返された光がパネルに当たることで、追加の発電が行われるのです。このように直接受ける太陽光だけでなく、反射光も利用することで、特に積雪時には高い発電量を発揮します。

2-2-2. 垂直式の注意点

垂直式の太陽光パネルは固定された角度で設置されているため、パネルに当たる太陽光の量が減少する時間帯・季節では、発電量が低下することがあります。そのため、設置向きは十分に留意しましょう。

また、垂直式は支柱の数が少なく、支柱との接触リスクは比較的低いものの、垂直に設置されたパネルは風の影響を受けやすいため、強風後の架台のズレや固定部の緩みが無いかの確認も欠かせません。

2-3. 追尾式の特徴

追尾式は、太陽の位置を追跡し、パネルの角度を自動的に調整する機械式の営農型太陽光発電です。この方式には、モーターやセンサーが組み込まれており、太陽の動きに合わせてパネルが常に最適な角度を維持してくれます。そのため、日中の太陽光をより効率的に活用することができます。

2-3-1. 追尾式のメリット

追尾式のメリットは以下の通りです。

・太陽の動きを追尾するため発電量を最大化できる
追尾式の最大のメリットは、太陽の動きを追って常に最適な角度で太陽光を受けるため、発電効率を最大化できる点です。朝から夕方まで太陽の移動に合わせてパネルが動くことで、固定式のものと比べて、高い発電量を発揮できます。

・1本足タイプが主流のため、農作業への支障が少ない
追尾式は1本足タイプが主流であり、農地内に設置する際に支柱の数が少なく済みます。そのため、支柱が動線を妨げることが少なく、効率的に作業を行えます。

2-3-2. 追尾式の注意点

追尾式のシステムは、構造の複雑さや高性能な部品を必要とするため、他の方式に比べて導入コストがより高額になりがちです。さらに、その分メンテナンス費用も増大するため、総合的なコスト負担が大きくなる点も留意する必要があります。

また、追尾式は機械的な可動部分を持つため、モーターやセンサーの経年劣化に伴う定期点検が必須です。特に、駆動部分の潤滑油の補充、センサーの感度調整、制御システムの動作確認など、固定式にはない特有の保守作業が発生します。

モーター故障時には追尾機能が停止し発電量を稼げないため、予防保全としての定期的な部品交換計画を立てておくのも重要です。追尾機構の不具合を早期発見するための遠隔監視システムの導入も有効です。

営農型太陽光発電のO&Mにおける重要ポイント

営農型太陽光発電は、通常の地上設置型に比べて 「農業を継続しながら発電を行う」 という特性があります。つまり、O&Mは単に設備を管理するだけでなく、農作業の安全性・効率性・収量にまで影響する点が大きな違いです。

以下では、営農型太陽光ならではのO&Mの重要ポイントを整理します。

3-1. 農作業スケジュールに合わせた保守計画が必要

営農型太陽光では、農作物ごとに「播種期・定植期・収穫期」が明確に存在し、その期間は農業機械の出入りが増え、人の往来も多くなります。そのため、O&Mでは 農家の年間作業計画と保守スケジュールを調整することが欠かせません。

  • 収穫直前など、作業が立て込む時期は大型点検を避ける
  • 農業機械の走行ルートを優先し、作業の邪魔をしない時間帯に点検を実施
  • 農作物への日射量が変化する時期は、日影条件の変動も含めてモニタリング

このように、O&Mを農業と切り離さず「農業と発電の両方を安定させる運用」にすることが、営農型太陽光の前提条件です。

3-2. 農業機械による接触・損傷リスクがある

営農型太陽光では、トラクター・管理機・運搬車などの農機が日常的に設備の下を通行します。そのため、通常の太陽光以上に、下記のリスクが高まります。

  • 支柱への接触による歪み
  • 架台基礎のズレ
  • 地中または地表ケーブルの損傷
  • 農作業中の事故による部材破損

そこでO&Mにおいては 発電量の遠隔監視に加えて、現地での目視点検が不可欠です。具体的には、「支柱の傾き、基礎の沈下、ケーブルの露出や割れ」「架台部材のボルト緩み」「農業機械で巻き上げられた泥・草・塵による設備負荷」が生じてないか等が挙げられます。これらを定期的にチェックし、早期に補修することで、農作業と発電を安全に両立させましょう。

3-3. 架台構造が高く、専門的な保守作業が求められる

営農型太陽光では、農作業スペースを確保するために架台の高さを2〜3m以上にすることが一般的です。これにより、「高所作業による安全管理」「通常架台よりも複雑な支持構造」「雨風・積雪時の荷重がかかりやすい」といった課題が発生します。

そのためO&Mでは、高所作業用の安全体制や、営農型特有の長尺架台に精通した専門業者による定期点検が欠かせません。特に、長期運用時には「高所構造のわずかな歪み」が農業機械の走行幅に影響し、農作業を阻害する事例もあるため、架台の健全性チェックも不可欠です。

3-4. 電気・通信のほか土木面での専門的なO&Mが求められる

農型太陽光は、下記の通り一般的な太陽光よりも扱う専門領域が幅広い点が特徴です。
排水不良は「作物生育の悪化→農地の評価低下→発電事業の存続リスク」にまでつながるため、O&Mでの土木面での点検は欠かせません。営農型太陽光では、この複合的な領域を横断的にカバーする体制が必要になり、一般的な太陽光よりも “総合力の高いO&M” が求められます。

3-5. 気象データや発電データが農作業にも活用できる

営農型太陽光は、発電事業として気象データ・日射量データを常時取得しています。下記データは、本来は発電分析に使うものですが、営農型では農業側のメリットにもなります。

  • 日射量:作物の生育状況、遮光率の調整方針
  • 気温・湿度:病害虫リスクの把握
  • 降雨:灌漑(かんがい)判断、作業計画
  • 発電量:設備影の変動や天候傾向から農作業を最適化

データを適切に取得し、異常値があれば早期に報告・対処することで、発電だけでなく農業の意思決定にも役立つ体制を築けます。つまり、O&Mは単なる保守ではなく、「営農と発電の両立を支える基盤」 となるのです。

営農型太陽光発電3種類の事例

営農型太陽光発電3種類について、4つの事例を紹介します。

4-1. 垂直式の最新事例:帯広畜産大学(北海道帯広市)

帯広畜産大学では、東急不動産と自然電力が共同で進める国内最大規模の垂直式営農型太陽光発電の実証圃場を活用し、農業と再生可能エネルギーの共生モデルの確立を目指した大規模な研究が進められています。十勝地域は日照条件に優れ、積雪量も比較的少ないため、垂直設置型の太陽光発電と相性がよく、冬季には積雪面からの照り返しによる発電量向上も期待できます。

本事例の設備は、本格的な栽培試験と発電データの収集を目的に整備されており、研究チームは十勝の基幹作物を実際に作付けし、収量・生育への影響や農業機械との干渉度合いを詳細に評価しています。特に垂直式は地上部の占有スペースが小さく、機械作業を妨げにくい点が注目されています。

また本取り組みは、労働力不足や資材価格の高騰など、地域農業が抱える課題に対して、再生可能エネルギーを組み合わせた持続可能な経営モデルを構築する狙いがあります。大学と企業が連携することで、農畜産業の振興とカーボンニュートラルの実現に寄与する新しい営農モデルの確立を目指す点が、今回の事例の大きな特徴といえるでしょう。

プレスリリース:東急不動産と自然電力による、国内最大規模の垂直式営農型太陽光発電所が竣工間近

4-2. 藤棚式の事例:株式会社讃岐の田んぼ(香川県丸亀市)

同社は藤棚式を3基導入し、下部では水稲や麦、ズッキーニ、ホウレンソウなどを栽培しています。採算面を心配していましたが、予想よりも高い利益が出るという見積りを得られたため、導入を決意します。

導入後は、安定した収益を確保できた点、自然に優しい再生可能エネルギーの利用を拡大できた点にメリットを感じています。一方で、草対策のために隙間なくトラクターを走らせたい時などは、支柱に当たらないよう注意を要するとのことでした。

同社は、営農型太陽光発電とスマート農業を組み合わせた取り組みを実践しています。

4-3. 垂直式の事例:酪農学園大学(北海道江別市)

同大学は自然電力株式会社および北海道自然電力株式会社と連携の上、ほ場に垂直式太陽光発電設備を設置。垂直式太陽光発電設備の有用性を評価するとともに、営農との共存について実証実験を行っています。

酪農経営においては、牛乳の売値はあまり上がらない一方、エサ代や光熱水費は高騰しているのが実情です。こうしたなか自然電力から、農地で牧草の栽培を継続しながらエネルギーも生産できるという提案を受け、「今の酪農にマッチした取り組みである」と考え、実証研究の実施に至ります。担当教授は「本来、冬場は何も生産できない土地でエネルギーを生み出せるのは、大きな転機になり得る」と評価しています。

また垂直式は、積雪時の地面からの照り返しによって、より高い発電量を発揮可能です。事実として、積雪時には、通常の野立て式太陽光発電設備と比較して高い発電量を記録しています。

本事例の詳細については、下記YouTube動画よりご覧いただけます。

YouTube動画:垂直式太陽光発電を活用した牧草地の持続可能な利用に関する実証研究

4-3. 追尾式の事例:個人農家(福井県坂井市)

福井県で稲作を営む個人農家のNさんは、2014年に追尾式の太陽光発電を8基導入しました。Nさんは以前より再生可能エネルギー発電設備に関心があり、自宅屋根に太陽光発電設備を設置していたことから、特に不安を感じることなく追尾式の営農型太陽光発電を導入します。

道路沿いに一本足タイプを並べて設置しているため、下部農地における農作業への支障は少なく、また、パネル下部で栽培している水稲についても品質・収量ともに問題がなく効率的に営農と発電を行うことができているとのことです。ただ以前に、パネル1枚が田んぼに落下したことがあり、対人・対物の保険にも加入しています。

まとめ

営農型太陽光発電は「農業を最優先にすること」が基本です。導入にあたっては農地転用(一時転用)に伴う毎年の営農状況報告や収量報告が義務付けられ、営農が適切に行われていないと判断されれば改善勧告や最悪は撤去命令の可能性もあります。そのため、方式選定では作物や機械動線、積雪・風況など現地条件を踏まえ、農作業を妨げない設計を優先的に考えなければなりません。

藤棚式・垂直式・追尾式の各方式には長所と短所(注意点)があり、いずれの場合も農繁期を避けた点検計画、農機接触を想定した現地点検、電気・通信・土木を横断する専門的なO&M体制、そして気象・発電データの活用が安定運用の重要ポイントです。

現場ごとに最適な設計と運用は異なります。自然オペレーションズ株式会社は営農を尊重する設計視点と、発電設備のO&Mノウハウを両立させた支援を行っています。営農型太陽光発電の導入検討や既存設備の運用改善でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
 


参考:
営農型太陽光発電について|農林水産省
再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可|農林水産省
営農型太陽光発電について:資料版|農林水産省
「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン」の制定について|農林水産省