太陽光発電所で広がるアルミケーブル活用|銅ケーブルとの違いと選び方

太陽光発電所において、設備コストの大きな割合を占めるのが「ケーブル費用」です。特に、長年標準的に使われてきた銅ケーブルは、世界的な価格高騰や供給不安により、導入・運用コストの上昇が課題となっています。
近年、こうした背景から代替素材として注目されているのが「アルミケーブル」です。軽量で施工しやすく、材料費も安価なことから、太陽光発電所を中心に採用が拡大しています。
そこで本記事では、銅ケーブルとアルミケーブルの違いや特性を整理しながら、それぞれのメリットや留意点、そして選定時のチェックポイントをわかりやすく解説します。コスト最適化と長期安定稼働を両立するための判断材料としてご活用ください。
太陽光発電所で注目されるアルミケーブル
銅ケーブルの高騰を背景に、太陽光発電所ではアルミケーブルの採用が進んでいます。ここでは、アルミケーブルが注目される理由および背景を解説します。
1-1. 銅価格の高騰と調達難が背景に
太陽光発電所の建設・運用コストを押し上げる大きな要因のひとつが、「ケーブル費用」です。特に、長年標準的に使われてきた銅ケーブルは、近年の世界的な銅価格高騰によってコスト面での負担が増しています。
LME(ロンドン金属取引所)における銅の取引価格はここ数年で上昇傾向が続いています。背景には、世界的なEVシフトやインフラ投資による需要増、さらには一部地域での供給制約が挙げられます。
一方、銅と比較してアルミは価格が3割程度とされ、資材コスト削減の観点から注目が集まっています。特に数百メートル単位でケーブルを敷設する太陽光発電所では、材料費の差が全体コストに大きく影響するため、アルミケーブルの採用が急速に広がりつつあります。
1-2. 太陽光発電を含むエネルギー分野で普及が進む理由
アルミケーブルがエネルギー分野で普及している理由は、単なる価格の安さだけではありません。
まず、軽量で扱いやすいという特性があります。銅に比べて約30〜40%ほど軽量なため、輸送・施工時の負担を大幅に軽減でき、特に大規模な太陽光発電所や風力発電所での施工効率向上に寄与します。
また、導電性能も一定水準を満たしているため、適切な設計・施工を行えば銅ケーブルと同等の安全性・信頼性を確保することが可能です。近年では、各メーカーが太陽光向けのアルミケーブル製品を多数開発しており、標準的な設計仕様として採用されるケースが増えています。
さらに、SDGsや脱炭素化に向けた動きも後押ししています。銅の採掘・精錬に比べ、アルミの製造工程はエネルギー効率が高く、再生アルミを活用すれば環境負荷を抑制できます。コスト削減と環境配慮の両立を実現できる点が、再エネ分野における採用拡大の要因といえるでしょう。
1-3. 販売数量の増加傾向
各種報道によると、国内でもアルミケーブルの販売量は増加傾向にあります。とりわけ、太陽光発電所やメガソーラー向けの案件では、主要な送電・配線区間にアルミを採用するケースが増えており、「一部区間をアルミに置き換えるハイブリッド構成」も一般化しつつあります。
また、アルミケーブルに対応した端末処理・接続端子の標準化が進み、以前に比べて扱いやすい環境が整ってきました。こうした市場環境の変化により、アルミケーブルは「コストダウンの選択肢」から「実用的な標準素材」へと位置づけが変わりつつあるのです。
2. 銅ケーブルと比較したアルミケーブルのメリット
アルミケーブルは、単に価格が安いだけではなく、設計・施工・リスク管理の各面で複数の利点を持っています。ここでは、銅ケーブルと比較した主なメリットを紹介します。
2-1.軽量で施工しやすい
アルミは比重が銅の約3分の1と非常に軽く、同じ導電性能を確保するために多少太い線径が必要であっても、総重量では大幅に軽量化できます。
このため、施工現場での取り回しが容易であり、作業者の負担軽減や施工スピードの向上につながります。特に傾斜地や長距離の配線が必要な太陽光発電所では、アルミケーブルを選定することで工期短縮や輸送コスト削減を期待できるでしょう。
また、軽量であることは架台やケーブルラックへの負荷低減にもつながり、長期的な設備安定性の面でも利点があります。
2-2. 材料コストが安価
銅とアルミでは、LME取引価格において1トンあたりで3〜4倍の差が見られます。
2025年10月時点の一般的な相場を例にすると、銅は約10,000ドル/t前後、アルミは約2,700ドル/t前後で推移しています。
この価格差は、数百〜数千メートル単位のケーブルを使用する太陽光発電所では、総コストで数十万〜数百万円規模の差となる場合もあります。加えて、近年は銅の世界的な需給逼迫が進んでおり、アルミへの置き換えによる調達リスクの分散という観点でも有効です。
再エネ設備のコスト最適化を進めるうえで、アルミケーブルはコストパフォーマンスと供給安定性の両面で有力な選択肢といえます。
自然電力グループでEPC事業を行う自然エンジニアリング株式会社が過去に携わった太陽光発電所工事では、プロジェクト全体のコスト最適化の観点から、アルミケーブルを用いた施工を提案し、実際に行った例があります。
ただ、銅に比べて端末加工や変換工事のコストがより多くかかる場合もあります。この点は「4-2. 導入時コストと長期運用コストを分けて評価する」にて詳細を解説します。
2-3. 盗難リスクが低い
銅ケーブルを扱う現場で長年問題となっているのが、「盗難被害」です。銅は資源価値が高く、中古市場でも売却が容易なため、建設現場や 太陽光発電所でのケーブルの盗難が後を絶ちません。近年、国内では運用中の太陽光発電所におけるケーブル盗難が社会問題化しており、被害に遭うとケーブル復旧のための損失の他、太陽光発電所の売電が停止することで売電収入が減るため、損失が大きくなります。
一方、アルミケーブルは盗難リスクが低いという明確な利点があります。理由は主に2つあります。
2-3-1. LME価格でみる銅とアルミの価格差
先述の通りLME(ロンドン金属取引所)の指標では、銅はアルミの約3〜4倍の取引価格で推移しています。この価格差は金属スクラップとしての価値にも直結しており、転売を目的とする盗難の標的となりにくいのです。アルミは質量あたりの単価が低いため、盗んでも利益が出にくいことが抑止力として機能します。
2-3-2. 銅に比べアルミが狙われにくい理由
もうひとつの理由は、「外見や取り扱いの違い」にあります。銅線は赤褐色で識別しやすい一方、アルミは銀白色で見分けにくく、現場で価値を即判断しづらいことも盗難を避ける要因です。また、アルミケーブルは柔軟性が低く、長い距離を切り出して運び出すには手間がかかるため、実際的な盗難コストが高いという特徴もあります。
3. 銅ケーブルとの違いにみるアルミケーブルの留意点
アルミケーブルには多くのメリットがある一方で、銅とは物理的・化学的特性が異なるため、設計・施工時にはいくつかの注意点を押さえる必要があります。
以下では、特に太陽光発電所における実務上の留意点を整理します。

3-1. 導電率が低くケーブル径が太くなる
アルミは銅に比べ導電率が約60%程度と低く、同じ電流を流すためにはより太いケーブル径が必要になります。そのため、設計段階で電圧降下や発熱リスクを考慮し、適切な断面積を確保した上で配線ルートを設計しなければなりません。
とはいえ、近年は電線メーカーが太陽光用途に最適化された高導電アルミ材や改良構造ケーブルを開発しており、銅との差は徐々に縮まっています。適切な製品選定を行えば、電気的性能上の問題は十分に解消可能でしょう。
3-2. 銅からアルミへの切替時は端末処理や変換工事が必要
既設設備で銅ケーブルを使用している場合、アルミへの切り替え時には接続端子の変更や端末処理の工事が必要です。銅とアルミを直接接続すると、異種金属接触による電食(ガルバニック腐食)が発生するおそれがあるため、専用の絶縁材・接続端子を使用する必要があります。また、接続機器によってはアルミ対応端子が用意されていない場合もあり、こうしたケースでは変換部の追加施工が求められます。
なお、こうした銅からアルミへの変換工事に対応できない企業が多いのも実情です。自然オペレーションズ株式会社では、再エネ設備のO&M(運用・保守)を多数手掛けており、銅ケーブルからアルミケーブルへの安全かつ確実な切替工事に対応可能です。設計段階から施工・運用まで一貫して支援できる点は強みの1つです。
3-3. 酸化しやすい
アルミは空気中で酸化しやすく、表面に酸化被膜が形成されます。この被膜自体は安定的で内部を保護する役割もありますが、接触抵抗の上昇や通電不良の原因になることもあります。
ただし、現在のアルミケーブル製品ではこの特性を踏まえ、防食グリスや特殊コーティング処理が標準採用されているため、適切に施工すれば問題はほとんど生じません。施工時には、メーカー指定の処理剤を使用し、端末の圧着・接続を正確に行うことで、安全性と信頼性を確保できます
4. 銅・アルミケーブルの選定を進める際のポイント
アルミケーブルを導入する際は、「単純なコスト比較」だけで判断するのではなく、発電所の条件・運用期間・メンテナンス体制まで含めて検討することが重要です。
以下に、銅・アルミケーブルを選定する際の3つの基本ポイントを整理します。
4-1. 発電所の規模や設置環境に合ったケーブルを選ぶ
発電所の規模、レイアウト、気温、湿度、設置形態(土地・屋根など)によって、最適なケーブルは異なります。例えば、高温環境や長距離配線が必要なメガソーラーでは、電圧降下や熱損失の影響が大きいため、ケーブル径の太いアルミを採用する設計が有効です。一方、狭小スペースや短距離接続が中心の小規模発電所では、柔軟性や接続互換性に優れた銅ケーブルが有利になる場合もあります。
このように、発電所の実情を踏まえた適正設計を行うことで、長期的な信頼性とコスト効率の両立が可能になります。
4-2. 導入時コストと長期運用コストを分けて評価する
アルミケーブルは材料費が安く初期導入コストを抑えやすい一方、銅に比べて端末加工や変換工事のコストがかかる場合もあります。そのため、「導入時コスト」と「長期運用コスト」を分けて評価することが大切です。
例えば、20年以上の長期運用を想定する太陽光発電所では、材料費だけでなく、保守のしやすさ・交換部品の調達性・メンテナンス工数までを含めた総合的な判断が求められます。
4-3. 長期運用に向けて更新・メンテナンス体制まで見据えておく
アルミケーブルを採用する場合、将来的な更新・増設・修繕の際にも対応できる体制を整えておくことが重要です。施工後の保守や定期点検で、接続端子の緩み・腐食の有無・絶縁抵抗の変化などを確認し、早期に対処することでトラブルを防止できます。
5. まとめ
太陽光発電所の運用を取り巻く環境は、この数年で大きく変化しています。銅価格の高騰や供給不安を背景に、これまで主流だった銅ケーブルからアルミケーブルへと切り替える動きが加速しています。
アルミケーブルは、「軽量で施工しやすく、材料コストが安価で、盗難リスクが低い」という明確な利点を持ちます。
特に再エネ分野では、大規模な配線距離と多数のケーブルが必要になることから、材料コストの削減効果がより大きくなります。その一方で、銅との物性差から、導電率の低さ・酸化への対策・接続端子の仕様など、設計・施工上の留意点も無視できません。
こうした背景を踏まえ、ケーブル選定においては次の3つの観点が重要です。
- 発電所の規模や設置環境に合った適正設計を行う
- 導入時コストと長期運用コストを分けて評価する
- 将来の更新・メンテナンス体制まで見据える
これらをバランスよく検討することで、初期投資を抑えつつ、長期にわたる安定稼働を実現できるでしょう。
自然オペレーションズ株式会社では、太陽光発電所の運用・保守(O&M)を多数手掛けており、知見やデータに基づいた最適なケーブル選定や設計支援を行っています。アルミケーブルの採用実績も豊富で、設計から施工・メンテナンスまで一貫したサポートにより、導入後のリスクを最小化し、長期安定稼働に貢献します。
本テーマについてお悩みの方は、まずは気軽にお問い合わせください。
参考:
電線素材、銅からアルミに 銅高騰で盗難防止ニーズ|日本経済新聞
LME Copper | London Metal Exchange
LME Aluminium | London Metal Exchange