ポリソイル緑化工|太陽光発電の未来を支える土木メンテナンスの重要性と最前線

近年、稼働開始から10年を迎える太陽光発電所が多くなっています。これらの発電所をインフラとして長期に維持するためには、電気設備のメンテナンスだけでなく、土木面のメンテナンスが欠かせません。特に異常気象による豪雨などの影響を受けやすい環境では、土砂の流出予防や地盤の安定化が求められます。

こうした問題を解決する手法の一つとして注目されているのが「緑化」です。自然オペレーションズでは、九州のある発電所での土砂の流出防止に「ポリソイル緑化工」を活用しました。本工法は一般的な緑化に比べ、効果発揮の速さ・安定性・施工しやすさ・費用対効果に優れており、私たちは土木メンテナンスの有効な選択肢として注目しています。

今回は、ポリソイル緑化工を提供している「株式会社丸八土建」の代表取締役・橋本智弥様に、その経緯や効果についてお話を伺いました。

法面工事のプロ「丸八土建」と「ポリソイル緑化工」との出会いー「すぐに濁水が出なくなり驚いた」

ーまずは御社の事業内容を教えてください

当社(株式会社丸八土建)は、主に法面工事や土砂対策を専門とする創業64年の企業です。公共工事が6〜7割、民間工事が3〜4割を占めており、三重県に拠点を置きながらも全国で施工実績があります。法面工事の分野では、多様な特殊工法にも対応しており、国内でも数社しか手がけられない工法も扱っています。


丸八土建 代表取締役 橋本智弥さん

例えば今回のメインテーマである「ポリソイル緑化工」の他にも、岩盤や硬い土でも強固な緑化基盤を造成しつつ景観の改善を図れる「ポリソイル客土工」や、仮設足場を必要とせずコストダウンと工期短縮が可能な「SD工法」、透水性をもつ多孔質のコンクリートを吹付けて河川護岸やダム湛水面、湧水法面等を保護する「ポーラスコンクリート吹付工」などを手がけています。

ー「ポリソイル緑化工」を扱うようになった経緯についてお聞かせください。

最初に「ポリソイル緑化工」と出会ったのは2017年でした。松阪市の太陽光発電所から「濁水処理や土砂流出を防ぎたい」というご相談を受けたのがきっかけです。発電所周辺の農家から苦情が寄せられ、県や市からも改善を求められていました。

対応策を色々と模索するなかで、沖縄県で赤土流出対策に使用されていたポリソイル緑化工に行き着き、提案の上で試験施工を行いました。

すると施工後3日目に豪雨があり、心配になって現場を見に行ったところ、濁水は全く発生せず、透明な水が流れていたんです。「これまでの工法とは全く違う!」と驚いたのを今でも覚えています。

その後、2000平米以上の土地を全面施工し、1カ月後には緑化が進み、土砂流出や濁水の発生もなくなりました。この成功事例をもとに、さらに全国各地での実績を積んできました。

また開発元である沖縄県の「りゅうせき建設」様へも成果を報告しており、協力してポリソイル緑化工を推進しています。

緑化スピード、安定性、施工のしやすさ、費用対効果など、「ポリソイル緑化工」の魅力にせまる

ーポリソイル緑化工の特長についてお教えください

早い段階から効果を得られる点ですね。冬場でも3日、夏場なら1日程度で表面が固まり、降雨による土壌流出を抑制できます。何も施してない土壌では、ガリー侵食(降雨によってできる溝)が生じますが、その発生を抑制できるようになるんです。この時点で多少の雨量では表面がほとんど流されなくなります。

その後は、吹き付けた基盤には種子と肥料が入っているので、時期が良ければ1カ月で緑化します。もちろん冬の場合は春先まで発芽を待つ必要があります。

ー使用する種子に制約はありますか

基本的に市場に流通している種子であれば、どんなものでも使用できます。

ただ、私たちは「現地の条件に適した種子」を推奨しています。暑さに強い、寒さに強い、日陰に強い、乾燥に強い、草丈など、環境に合わせた選定を重視します。例えば、太陽光発電所の場合は、草丈が低い種類の種子が望ましいですね。

そういった現地での条件を踏まえつつ、どの時季でも緑化を保てるように5〜6種類の種子を混ぜたものを提案しています。

ー種子のまき直しなど定期的なメンテナンスは必要ですか

こまめに維持管理を行うのに越したことはないですが、成長後に新たに落とした種が育つものや、匍匐茎(ほふくけい)で親株から出た茎が新しい根を形成していくものがあるので、一定期間は放っておいても問題はありません。

ただし、どうしても雑草が2〜3年目から徐々に増えてきます。その際には草刈りをしたり、選択性の除草剤を用いたりといった手入れをすれば長くきれいな状態を保てます。まき直しをしなくても、緑化が続いていれば保護状態を維持できていると見なして大丈夫です。

つまりは、ポリソイル自体は緑化するまでの役割で、緑化すれば自然任せで機能を維持できる仕組みです。吹き付けたあとポリソイルの基盤は徐々に風化していき、自然界に溶け込みます。分解性の樹脂ではないため残留はしますが、残っても動植物には影響を与えないため安全なので、農地でも問題なく使えます。

ー吹付用のホースをもった人が作業を行える場所であれば、どこでも施工可能と考えてよいでしょうか

はい、用いるホースは作業用車両から400mほどは延長できるため、傾斜地(10〜15%程)であっても300mくらいは施工可能です。

基本的には、太陽光発電所の建設がすべて完了したのち、最後の工程で施工するのが理想です。架台設置や電気工事が終わった後に、五月雨式で施工を進めることも可能です。

ー建設後の方が適しているという条件は、メンテナンスにも適していますね。施工時間の目安はどのくらいでしょうか

作業車両1台で、1日あたり平均3,000平米ほどですね。例えば、40,000平米ほどでしたら、4週間程度といったところでしょうか。作業条件が悪ければ2,000平米ほどに落ち込むケースもありますが、順調な時は最大で5,000平米行えたこともあります。

もちろん車両を増やせばその分、1日あたりの施工範囲を広げることもできます。

ーどのような土質でも施工できるのでしょうか

土壌のpHが4〜8の間、硬度が25〜27ミリ以下であれば問題ないため、日本国内ではほとんどの土地で施工可能です。もし硬度に問題がある場合などには、「ポリソイル客土工」で対処できます。

そのため、植生できないほどの急斜面など余程の悪条件でない限りは、どちらかの工法で施工できると思います。少なくとも、太陽光パネルが設置できているような土地であれば心配ないでしょう。

また、ほとんどの都道府県で実績がありまして、太陽光発電所での実績は「1,000ha以上」にも及びます。


丸八土建の施工実績例
山腹崩壊を起こした三重県の現場。2025年1月(冬)の様子。
崩壊直後は岩や土が完全に露出した状態だった(写真奥参照)が、法面をポリソイル緑化工で被覆したことでさらなる土砂流出を防いでいる。


同じ場所にて、2025年6月の様子を撮影。順調に生育している状況が観察できる

ー費用面についてはいかがでしょうか

例えば、すべてをコンクリートで覆うのは莫大な費用が必要ですし、一方で単に種をまくだけのような処置は安価ですが安定性に不安が残ります。その点、ポリソイル緑化工は比較的安価かつ実績も十分なため、強くお薦めします。

ポリソイル緑化工の実例と今後に向けて

ー自然オペレーションズと施工した九州の事例について、当時の様子を教えてください

ご依頼いただいた太陽光発電所のオーナー様は、土砂の流出で困っておられました。水路はつくっていましたが上手く機能せずに水が斜面を流れてしまい、草も定着できない荒地のような状態でした。火山が近く砂や礫(れき)が多い地域で、なお且つ雨量も多い地域でもあります。また近隣の農家さんや住民の方からは、苦情も寄せられていたそうです。

実際にその土地を調べると、表面が浸食防止されておらず浸食を受けやすい状態でした。そこで、ポリソイル緑化工を施し、加えて横断的排水溝で水の流れも改善しました。

またオーナー様からは、発電効率に支障をきたさないために「発電施設(パネル設備)を汚さないでほしい」という要望がありました。ポリソイル緑化工の特長の1つである「低圧吹付け」により、パネルを汚さないまま一般的な吹付作業と同じ早さ(1日3,000平米)で施工できました。

この「パネルを汚さないで施工できる点」と「丸八土建の太陽光発電所での施工実績(累計1,000ha以上)」がご依頼の決め手になったとのことです。


緑化前の様子:山肌では土や礫が露出し、雨が降ると水が斜面を流れる状態


緑化後の様子:緑化により土砂の流出が防げている。同時に排水機能の改善も行ったことで適切に排水される状態になった

ー緑化後、オーナー様からの感想はいかがでしたか

オーナー様の感想は一言で表すと「大満足」とのことでした。竣工検査も地元自治体の担当者同席の上で実施し、住民の方や農家さんからの苦情を心配されていた区長にも納得いただけています。

現地状況を確認しましたが、越冬状況は十分で3月には発芽を期待できる状況です。施工によって植物が生えている箇所は土壌の凍結がみられませんでした。土壌の水分が凍るような状態では、凍結融解によって土が流されやすくなり、濁水の発生リスクを高めてしまうのですが、緑化の効力でこれを防止できています。

ー太陽光発電所の緑化工について普及が進んでいる印象はありますか

現状としては、オーナー企業様、EPC業者様のリピート引き合いが多いです。ただ一方で、国交省が運営するNETIS(新技術情報提供システム)にも登録できたものの、今のところ思ったほどの反響はないのが率直な印象です。

つまりは、必要とする地域や事業者様はまだまだ多い反面、緑化の効力に対する認知がまだまだ広まっていないのが問題と考えています。とはいえ、お声がけいただいたお客様から「(こんなに良い工法があったなら)もっと早く知りたかった」という声を頂くこともあるため、今後はより緑化工の普及に努めたいですね。

ー当社としても今後、緑化を含めた土木補修の必要性を伝えるためのセミナーなど、啓蒙につながる取り組みを通じて、徐々に理解を広めたいと考えています。ありがとうございました。

今回ご紹介した「ポリソイル緑化工」は、自然オペレーションズからも事例や実績などのご案内ができます。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。

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