太陽光パネルのリサイクルや廃棄など実際の処理方法と課題
再生可能エネルギーの主役として広く普及している太陽光発電。しかし、設置から20〜30年が経過し、今後は大量の使用済みパネル(廃パネル)が発生すると予測されています。
そうしたなか注目されているのが、太陽光パネルのリサイクルおよび廃棄に関する処理方法と、その過程に潜む課題です。
本記事では、廃パネルが実際にどのような手順で処理されているのかを紹介するとともに、リサイクルの現場で直面している技術的・経済的な問題点、そしてリユースパネルの海外流出リスクまでを解説します。
廃パネル処理の全体像と手順
こちらの図は、不要となったパネルを処理していく課程の全体像をチャート形式で表したものです。
▼廃棄パネル処理方法の全体図
以下では、この全体図をもとに「不要となったパネルがどう処理されるか」について順を追って解説します。
第1ステップ:金銭的な価値が有ればリユース
不要となったパネルが発生した場合、第1ステップとして「金銭的な価値が有るか/無いか?」を判断します。この時点で、「金銭的価値がある」と判断されたパネルは「売却」により「リユース」します。例えば、裏面に傷があるが発電機能には何ら問題がない場合などは市場価値があるため、このケースに該当します。
一方で表面のガラス割れや変形などで発電機能に支障をきたす恐れがあるパネルは、「金銭的価値がない」と判断されます。ここで初めて「廃棄物(廃パネル)」と見なされ、次の第2ステップで廃棄物処理法に則って処理されることになるのです。
第2ステップ:可能な限りリサイクル
第2ステップでは「廃パネル」の各構成部品を可能な限り「リサイクル」します。
第1ステップにて金銭的な価値がないと判断された廃パネルは、廃棄物処理法(廃棄物の処理と清掃に関する法律)の適用を受け、産業廃棄物として定義され運搬や処理の許可を持った「収集運搬業者」や「中間処理業者」に処理が委託されます。その後、同法によって適正処理が進められるものの、「循環型社会形成推進基本法」に則り、可能な限りリサイクルをしつつ処理が進められます。
まずケーブル部分やジャンクションボックスが取り外され、「金属リサイクル」にまわします。
次いで「アルミフレーム」が取り外され、「アルミリサイクル」へ。
第3ステップ:残りは最終処分場へ
そして、リサイクルが困難な残りの「ガラス/セル/EVA」は破砕処理を施した上で「最終処分場」へ廃棄されます。その際、鉛(Pb)の濃度が一定値より高めければ、「管理型最終処分場」へ、低ければ「安定型処分場」へ送られます。
なお「管理型最終処分場」とは、廃棄物の埋立処分によって発生する浸出液による地下水や水質の汚染を防止するために、遮水処理(特徴①)や浸出水コントロール(特徴②)がなされている処分場です。
このように日本国内の最終処分場では、鉛(Pb)のような有害物質が外へ漏れ出すようなことがないよう、しっかりと対策がなされているので安心といえるでしょう。
廃パネルリサイクルにおける障壁
廃パネルリサイクルにおける主な障壁は、次の3つです。
- ガラスの分別
- ガラスの再利用
- 適正処理より高コスト
以下で、それぞれを解説します。
1. ガラスの分別
廃パネルをより適正に処理するにあたり、技術面・コスト面で障壁となっているのが「ガラスの分別」です。
現状としては以下の通り、①~③の大きく3区分の処理方法がありますが、ここでは「①切断」「②熱処理」の2つを取り上げます。
▼ガラスの分別方法一覧
※出典:太陽光発電設備の廃棄・リサイクル制度の論点について|経済産業省・環境省
切断:ホットナイフ処理
ホットナイフ処理とは、カバーガラスと樹脂の接着面に加熱した刃物(ホットナイフ)を差し込んで切り離す方法です。
■メリット
ガラスを破砕することなく分別できる
■デメリット
1枚当たりのコストが高い(時間が掛かる)
銀鉛電極が付着する可能性があり、ガラスとしての品質が不安定
熱処理:熱分解処理方式(ガラスわけーるⅢ型)
熱分解処理方式とは、高温でガラスを熱分解し、樹脂や他成分を分離・回収する方法です。
■メリット
シリコンセルを傷つけることなく、ガラスだけを割って分別できる
ガラス再生砂として、工事での活用に大きな需要を見込める
■デメリット
1枚当たりのに処理時間が掛かる
2.ガラスの再利用
廃パネルから取り出したガラスをそのまま再利用できれば問題ないのですが、現在ガラスメーカーなどにおいても大きな需要がないのが実情です。
またガラスとして再利用するには一定以上の品質が求められるものの、先述したような銀鉛電極をしっかりと取り除くような処理には相応のコストを要します。
そのため、現状としてはガラスそのままとしての再利用よりも、路盤材やグラスウールのようなガラスの2次製品としての活用が主流です。
3.適正処理より高コスト
リサイクルにかかるコストが、適正処理を行うコストより高い点も問題です。
下記は、当社事例を基にした処理方法別の単価比較表です。
▼処理単価比較表|方法別
このように、廃パネルをリサイクルする場合は1枚当たり4,400円かかりますが、適正処理で廃棄する場合は1枚当たり3,300円であり、1,100円ほど安く処理できます。
こうした傾向は、経済産業省や太陽光発電協会(JPEA)においても同様の報告がなされています。
- 産業廃棄物として処理:リサイクル : 約 3,000円/枚 (重量:約 20kg)
- 産業廃棄物として処理:適正処理 : 約 2,000円/枚 (重量:約 20kg)
リユースパネルが海外に流れるリスク
ここでは、リユースパネルが海外に流れるリスクについて解説します。
まず現状として、国内では状態の良い廃パネルを買い取ってくれる企業が増えており、業界としても成長ポテンシャルを有しています。同社では買い取ったリユースパネルは最大で3年程の保証をつけて再販売していますが、今後は性能評価方法をより改善し、保証期間をさらに延ばすことを課題としています。
一方で、買取のみを受け付けるものの、活用先を示さない企業も散見されます。こうした適正な再利用が見込めない企業への依頼は、次に紹介する理由により控えた方が良いでしょう。
海外に流れると不適切な処理がなされる可能性がある
国内では廃棄物処理法に則って適正処理がなされますが、もし先のような企業を通じて海外に流れると、トラッキング(追跡)できないまま不適切な方法で処理されてしまう可能性があるのです。
具体的には、電子廃棄物や使用済みプラスチックの問題事例と同様に、安い賃金で分別作業が行われ、アルミのみ回収されて、余った部品はそのまま残留させられてしまうかもしれません。
以上により、廃パネルが生じた際には、法令遵守で適切な処理を行う企業を選定することが大切といえるでしょう。
まとめ
太陽光パネルの廃棄・リサイクルには、「ガラスの分別」や「再利用の難しさ」、「処理コスト」など、いくつもの障壁が存在します。加えて、国内での適正な処理体制を整備しないままリユース品が海外へ流出すれば、不適切な処理による環境汚染のリスクも否定できません。
今後ますます増える廃パネルに対応するためには、処理技術の高度化や再利用ルートの確立に加え、法令遵守で安心して任せられる事業者の選定が欠かせません。企業や個人がこうした問題に向き合い、持続可能なエネルギー社会の実現に貢献していく姿勢が求められているのです。
当社としても、使用済みパネルの適切な処理に関する各種問題に関心を持ち、正しく理解した上で活動・発信を行うことで、日本国内だけでなく世界の問題解決に貢献したいと考えています。