太陽光発電の保険の最新動向|事業者に求められる行動も解説

太陽光発電の保険は、近年値上がり傾向です。2017年の発生保険金と比較して2022年に支払った保険金は大きく増加しました。2024年においても、火災保険の値上げが実施されました。

この記事では、太陽光発電の保険の最新動向について解説します。変化する動向の中で、被害を大きくしないために事業者に求められる対策の考え方もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

太陽光発電の保険料は値上がりしている

太陽光発電所の保険料は近年値上がり傾向にあります。保険に関して直近の動向をまとめると、以下のとおりです。

  • 2022年10月:保険料の値上げが実施される
  • 2023年9月:保険の免責金額が設定される
  • 2024年10月:火災保険が値上がり

2024年においても、火災保険の値上げが実施されました。損害保険料率算出機構から、火災保険料を全国平均で13%前後値上げすると公表されています。

ここからは、太陽光発電の保険が値上がりしている背景や保険の種類について解説します。

太陽光発電の保険に関して値上がりしている背景

一般社団法人 日本損害保険協会の情報によると、2017年の発生保険金と比較して2022年に支払った保険金は20倍近くにもなるとのことです。全国的に損害が生じている中で、特に茨城県・栃木県・千葉県といった関東地方北東部が多い傾向です。

保険が値上がりしている背景・原因として考えられるのは、以下のとおりです。

  • 自然災害等
  • 盗難

まず、気候変動に伴う地震や雷、台風などの自然災害の激甚化が挙げられます。例えば、台風が生じると、車両保険や火災保険などの支払いが生じます。日本は、毎年一定数の台風が上陸するため、水災(水害)リスクに応じて地域を5分割しており、リスクが高い地域になるほど保険料も高くなる傾向です。水害以外にも、石川県にある発電所では雪災などで被害が生じたという例もあります。特に近年では10年前には想定していなかった規模での自然災害が頻発しており、保険料の負担も増加しています。

続いて、盗難被害も保険金額に影響を及ぼしています。経済産業省によると、2022年と2023年の保険金支払いの中で盗難被害の占める割合が急拡大しました。盗難被害の状況から鑑みて、盗難補償の持続的な引き受けが難しくなっているとともに、事業者側は自然災害だけでなく盗難被害の対策が求められています。

太陽光発電に関する保険の種類

太陽光発電では、主に以下のような保険があります。

火災保険自然災害や落下物、盗難などによる発電所の被害に備えられる保険
地震保険地震による太陽光発電所の被害に備えられる保険
施設所有者賠償責任保険「飛散したパネルが近隣住民や民家に損害を与えた」など、第三者に被害を与えた場合に備えられる保険
休業損害補償太陽光発電所が自然災害などで発電できなくなった場合に備えられる保険

上記の保険は、主に太陽光パネル・発電設備の損害を補償するための火災保険や地震保険、事故で正常に稼働しなくなったことで生じる損失を補償する利益保険に分けられます。基本的に事業者は両保険に加入します。

ここからは、それぞれの保険に関して特徴を解説します。

火災保険

自然災害や落下物、盗難などによる発電所の被害に備えられる保険です。普通火災保険・動産総合保険・企業向け包括保険などが該当します。

地震保険

地震による太陽光発電所の被害に備えられる保険です。地震による火災・噴火・津波などが対象となります。

施設所有者賠償責任保険

火災保険・地震保険などで補償されない「第三者への被害」に対するケースに備えるための保険です。例えば、「飛散したパネルが近隣住民や民家に損害を与えた」場合などに保険が適用されます。

休業損害補償

太陽光発電所が自然災害などで発電できなくなった際、損失を補うための保険として適用されます。被害が生じて修理に時間がかかる場合、休業損害補償に加入していると損失を補えます。

 

盗難被害に関して補償の対象外とされているケースがある

2023年から急拡大した盗難被害ですが、保険に関して補償対象外となっているケースもあります。以下の画像は、経済産業省から公表されている資料です。


出典:経済産業省|太陽光発電施設における火災保険契約の現状

2022年度から2023年度にかけて盗難被害が急拡大したことで自然災害の支払保険金の規模と並ぶほどになりました。盗難補償の持続的な引受が困難になっている状況から、近年では引き受け方針が変更になっています。実際に、盗難被害発生時の補償がどのようになっているか、一度チェックしておくことをおすすめするとともに、盗難被害を未然に防止する対策が必要です。

 

盗難被害が起きやすい太陽光発電所の特徴

太陽光発電は、特別高圧・高圧・低圧の3種類に分かれますが、特に盗難の対象として狙われやすいのは高圧以上の太陽光発電所です。

高圧以上の発電所は銅ケーブルの設置量が比較的多いことから標的にされる傾向があります。また、大規模な発電所は山の中など人通りから離れていることで人目に触れず盗まれやすいと考えられています。昨今では、手口も巧妙化しており、低圧太陽光発電所や人目に付くと思われる発電所でも盗難被害にあうケースが発生しています。
盗難対策に関しては、犯人グループ・盗難者に対して「盗みづらい」「リスクが高い」と判断させることが大切です。

【あわせて読みたい】太陽光発電所の盗難被害とは|被害の実例や必要な考え方を解説]

 

太陽光発電の盗難被害・自然災害による被害対策で必要な考え方

太陽光発電所の盗難被害対策・自然災害対策は、避けて通れないものです。
まず防犯対策では、設備設計面・運営面に分けて考えましょう。以下の表は、盗難被害・自然災害に対して必要な考え方をまとめたものです。

項目区分必要な考え方
設備設計面で必要な考え方盗難被害・太陽光発電所の防犯対策が外から見えるようにする
・侵入者に対して盗難を実施しづらくするための設備環境を整える
・配線をなるべく露出させないようにする
自然災害・沈砂池、調整池を設ける
・定期的に水路のかき出しを行う
・水みち(みずみち)や雨裂(雨による線状の崩壊地)など、水の流れた跡が生じていないか確認する
・誘導雷対策の設備を導入する
・架台の劣化やボルトの緩みが起きていないか確認する
運営面で必要な考え方盗難被害・ケーブルを中心に異常時検知の工夫を施す
・自社だけで盗難を防ごうとするのを控え、警備会社・警察との連携を図る
・盗難が生じた際の手順や対策を決めておく
自然災害・土木的な補修を段階的に実施した場合の事業計画を想定する
・日頃から土木パトロールを実施する
・遠隔監視システムを用いて常時監視できる体制を整える

設計面では、ケーブルが盗まれにくい環境を整えることを意識しましょう。ケーブル自体を盗まれにくくする、太陽光発電設備に近づきにくくするという工夫を施すことが大切です。運営面では、異常が生じた際に迅速に検知・対応できるよう工夫しておきましょう。盗む側が「盗みづらいしリスクも高い」と盗難しなくなる、盗難しようとしてもすぐに発見して対処できる環境を整えましょう。

また、自然災害による保険も値上がりしています。その背景に、昨今の自然災害の激甚化・頻発化による、保険金支払額の増加があります。日本では、2018・2019年に風災と水災を中心に1兆円を超える保険金支払いとなり、地震を除く主な自然災害への支払保険金総額が過去最高を記録しました。世界的にも、台風・サイクロンのようなこれまでにあった低気圧に加え、急激な気流の変化によって生じた暴風雨への補償が増加の一途をたどっています。
約20年間、同じ立地で稼働し続ける太陽光発電所ですが、自然災害による被害の防止対策として、日頃から土木パトロールを実施することなどが挙げられます。

日頃からパトロールして異常がないかチェックし、被害が生じても保険の上限額以上のトラブルにならないよう予防していくことが大切です。

 

【解説】変化する環境の中で事業者に求められる行動とは

ここまで、太陽光発電所の保険の動向や被害対策で必要な考え方についてご紹介しました。今後も、保険の動向は変化することが予想されますが、事業者にはどんな行動が求められるのでしょうか。

求められる行動として挙げられるのは、主に以下の2つです。

  1. 損保各社が提供する事故の予防サービスの確認
  2. 災害による被害を最小化するための定期的なメンテナンス

ここからは、それぞれの内容について詳しく解説します。

行動1. 損保各社が提供する事故の予防サービスの確認

まず、損保各社が提供する事故の予防サービスの確認をしておきましょう。サービスの内容を見直したり確認したりすることで、より被害が生じない状態を作る、被害が生じても最小限に抑えることが可能になるためです。

例えば、置場所ごとに自然災害による破損リスクを診断したり補強方法を助言したりするサービスなどがあるか確認しましょう。

行動2. 災害による被害を最小化するための定期的なメンテナンス

保険を設定している場合でも、昨今は地球温暖化の影響から、保険設定時の想定よりも大規模な天災に見舞われる可能性があります。自然災害は立地による影響が多いものの、定期的なメンテナンスや追加工事による対策をすることで、被害を最小化する工夫ができます。設定していた補償額の上限を超えた被害に至らないために、計画的なメンテナンスや補修を心がけましょう。

例えば、太陽光発電所においては電気に関する法定点検に加え、定期的な土木パトロールを行う、想定より激しい天災が予想される場合は計画的に補修を行う、遠隔監視システムなどでトラブルが生じた際にすぐに検知・対処できる状態を整えておく、などの日頃の備えが大切です。トラブルの影響・被害を最小限に抑え、太陽光発電の売電収入の低下を最低限にとどめましょう。
万が一自然災害の被害に遭ってしまった場合も、弊社では保険申請のサポートを行っていますので、お気軽にご相談ください。

 

まとめ

このように、太陽光発電の保険は、近年値上がり傾向にあります。

太陽光発電の保険は、太陽光パネル・発電設備の損害を補償するための火災保険や地震保険、事故で正常に稼働しなくなったことで生じる損失を補償する利益保険に分けられます。事業者はどちらの保険にも加入して備えるのが基本です。

保険が設定されている場合でも、昨今損害の規模が拡大しているケーブル盗難・自然災害の対策に備えて、トラブルが生じた場合でも影響を最小に抑えることが大切です。値上がりする保険の財源を見直しながら、損害を拡大しないよう、計画的なメンテナンスや補修を実施することをお勧めします。

弊社では、遠隔監視によるモニタリングを含めた、さまざまな太陽光発電のO&M(運営・保守)業務に対応しています。メンテナンス面では、除草や、太陽光モジュールの洗浄、土木工事、リパワリングなど幅広いサービスを提供しています。プロとしてのノウハウを活かし、売電損失を最小限に抑えるための保守・運用をご提案いたしますので、ぜひご相談ください。

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