虫や小動物、植物による太陽光発電設備のトラブルとは?

(※画像はイメージです)

事例や原因、対策方法を解説太陽光発電設備のトラブルにはさまざまな原因が考えられますが、その中には虫や小動物、植物によるものがあります。虫が設備内に侵入したり、植物が伸びて太陽光パネルや設備に侵入したりと、発電量の低下につながる被害事例はさまざまです。それぞれの事象に対して原因を突き止め復旧したり、あらかじめ定期的なメンテナンスを実施して予防することは、太陽光発電所の運用で欠かせません。

この記事では、虫や小動物、植物による太陽光発電設備の発電被害について詳しく解説します。弊社がこれまでに対応した事例の原因と対策をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

太陽光発電設備は小動物や植物が原因で被害が生じるのか?

日本においては、特に高圧や特別高圧の太陽光発電所が地方の平地や山の中に建設されることが多く、自然に囲まれているため、小動物や植物が原因で生じる被害は思いのほか多いものです。

例えば、以下のような被害があります。

  • カラスなどが送電鉄塔や変電所を屋根代わりにして営巣する
  • アリやハチが設備に侵入して巣を作る
  • 虫やトカゲなどの小動物が配線に触れてショートする
  • つる性の植物が侵入して故障する、風圧や重みでフェンスが倒壊する
  • 太陽光パネルの隙間から木やつる性植物・草が伸び、表面を覆い隠す
  • 竹が太陽光パネルを押し上げ、損壊する
  • トンボの産卵により調整池付近のパネルが汚れる

発電量に影響を及ぼしたり故障につながるのはもちろん、フェンスの倒壊やケガにつながるケースもあります。小動物や植物が些細なものと放置することで大きな被害につながるため、あらかじめ対策して予防することが大切です。

太陽光発電設備における虫・小動物・植物が原因の被害事例

弊社は、太陽光発電所を含めた自然エネルギー発電所の運営・保守(O&M)事業やアセットマネジメント事業を行っています。国内で管理している発電所のパフォーマンス向上を目指したサービスを提供しています。

その中で、虫や小動物、植物が原因によって生じる被害事例に対しての対策もしてきました。ここからは、弊社が実際に対応した事例の原因と対策についてご紹介します。

事例1. 虫による被害と対策

まずは、弊社がこれまでに対応した太陽光発電設備の被害事例の中から、虫が原因で生じたものをご紹介します。ケースは、以下の通りです。

  • カゲロウの大量発生で太陽電池パネルが汚損
  • 接続箱にナメクジ・アリが侵入したことによる被害

1-1. カゲロウの大量発生で太陽電池パネルが汚損

1つ目のケースは、カゲロウの大量発生による太陽光パネルの汚損です。カゲロウは、主に河川や渓流などで生息している昆虫ですが、太陽光パネルに大量発生し、パネルが汚損、発電量の低下を引き起こしていました。

この事例で実施した対策は、太陽光パネルの洗浄です。早期に洗浄して本来の発電量に戻し、売電損失を最小限に抑えています。

1-2. 接続箱にナメクジ・アリが侵入したことによる通信基盤の焼損

2つ目のケースは、接続箱にナメクジ・アリが侵入したことによる通信基盤の焼損です。接続箱にある電線接続部分のすきまから侵入し、被害が生じました。

この事例で実施した対策は、電線貫通部のシールの補強です。シールを補強することですきまを完全に防ぎつつ、雨風などでシールが剥がれないようにして被害が再発しないように対策しました。

事例2. 植物の被害と対策

続いて、弊社がこれまでに対応した太陽光発電設備の被害事例の中から、植物が原因で生じたものをご紹介します。ケースは、以下の通りです。

  • 樹脂(樹液)で太陽電池パネルが汚損
  • ツルや蔦によるフェンスの倒壊
  • 枯れ木の倒壊により太陽電池パネルが破損

2-1. 樹脂で太陽電池パネルが汚損

1つ目のケースは、樹脂によって生じた太陽光パネルの汚損です。付近の樹木から樹液が垂れ、固まって樹脂となり太陽光パネルを汚損をすることにより、発電量の低下が起こりました。樹液以外にも花粉や畜舎などのからの有機性の汚れが太陽光パネルの汚損は生じます。また、このようなこびりつくタイプの汚れは風雨による自然な汚れの洗い流しでは除かれないため、注意が必要です。

このケースに対して実施した対策は太陽光パネルの洗浄です。カゲロウの大量発生のケースと同様、太陽光パネルを洗浄して本来の発電量に戻しました。

2-2. ツタや葛によるフェンスの倒壊

2つ目のケースは、ツタや葛(クズ)などのつる性植物によるフェンスの倒壊です。つる性植物を放置して伸びたままにすると次第にフェンスが覆い隠され、風が通り抜けにくくなり、風圧を受けやすくなります。強風時の強い風圧を受けた結果、フェンスが耐えられずに倒壊したという事例です。

このケースに対して実施した対策は、除草頻度の増加です。つる性植物が伸び切る前にあらかじめ取り除いておくことでフェンスの倒壊の他、太陽光パネルの覆い隠しによる売電損失を防げます。

2-3. 枯れ木の倒壊により太陽光パネルが破損

3つ目のケースは枯れ木の倒壊による太陽光パネルの破損です。太陽光発電設備の周辺にある立ち枯れ木を放置した結果、倒壊して太陽光パネルに当たり破損が生じました。太陽光パネルの破損は発電量低下だけでなく、修繕費用もかかるため二重の損失につながります。

このケースに対して実施した対策は、立枯れ木の伐採です。立枯れ木が倒壊するよりも前にあらかじめ取り除いておくことで、自然倒壊や、台風などの自然災害の時の倒壊を予防します。

事例3. 小動物の被害と対策

最後に、弊社がこれまでに対応した太陽光発電設備の被害事例の中から、小動物が原因で生じたものをご紹介します。ケースは、以下の通りです。

  • 猪、鹿によるPVコネクタの断線
  • 鹿によるフェンス破損
  • カラスの落石による太陽光パネルの破損

3-1. 猪、鹿によるPVコネクタの断線

1つ目のケースは、猪、鹿によるPVコネクタの断線です。PVコネクタは、太陽光パネル間をケーブルでつなぎ合わせる際の中継コネクタですが、これらが動物によって断線した事例です。

このケースに対して実施した対策は、罠の設置依頼です。地元のハンターに罠を設置してもらい、動物の侵入を防ぐことで被害を防ぎます。特に山の中や山の近くにある発電所においては、小動物や植物だけでなく、ある程度の大きさがある動物の侵入が想定されます。

3-2. 鹿によるフェンス破損

2つ目のケースは、鹿によるフェンス破損です。鹿の侵入経路にあったフェンスが破損し、侵入を許してしまう事象が生じました。鹿が侵入すると、先ほどご紹介したようなPVコネクタの断線につながる恐れがあります。

このケースに対して実施した対策は、センサー付きライトの設置です。侵入経路にセンサー付きライトを設置し、光によって鹿の警戒心を刺激することで侵入を防止します。

3-3. カラスの落石による太陽光パネルの破損

3つ目のケースは、カラスの落石による太陽光パネルの破損です。カラスは貝やかたい木の実を高い場所から落として割ることでそれらを捕食する習性があり、それが転じて石を落として遊ぶことが知られています。これが転じて石を落として太陽光パネルを割る被害につながることがあります。

これらのケースで実施する対策も複数あり、以下のような取り組みをこれまでに行っております。

  • ハンターによる定期巡回による威嚇
  • ハンターと同じ蛍光ベストによる巡回
  • 点滅ライトによる威嚇
  • カラスの警戒する鳴き声を放送
  • カラス除けの風車やテグス等の設置

太陽光発電所内に虫や動物が生じる原因と対策

先ほどの解説で、太陽光発電所内に虫や動物が生じることでさまざまな被害につながることが分かりました。ではなぜ生じるのでしょうか。

主な原因として考えられるのは、以下の通りです。

  • 雑草が繁茂している
  • 設備の形状が巣作りに安全な場所と認識されやすい
  • 土木的リスク・獣害リスクへのチェック体制がない

それぞれの原因とそれに対する対策について詳しく解説します。

原因1. 雑草が繁茂している

まず考えられる原因が雑草の発生です。太陽光発電所周辺のメンテナンスを怠ると、雑草が成長して害虫や小動物が住みやすい環境になり、被害につながる恐れがあります。

虫の住み着いた場所には、それをエサとする蛇やねずみなどの小動物が寄りつきやすくなるため、雑草の二次被害として被害が生じている可能性が考えられます。また、上述の事例でもあったように、雑草そのものが成長することで太陽光パネルの覆い隠しやフェンスの倒壊などにつながります。

まず考えられる対策は除草です。除草頻度を調節して、その発電所に合った頻度での定期的なメンテナンスを実施することをご検討ください。。

原因2. 設備の形状が巣作りに安全な場所と認識されやすい

太陽光発電パネル下は構造的に屋根のような形をしているため、巣作りに適した環境であることも原因として考えられます。
雨風をしのぎつつ外敵から狙われにくい場所であるためです。例えば、鳩などは外部の敵から卵を守る位置を好む傾向から、太陽光パネルの下側や電柱上などに巣を作ることがあります。

こちらに関しても、目視点検や適切なメンテナンス頻度を設定し、点検の都度で取り除く予防的対策が挙げられるでしょう。

原因3. 土木的リスク・生物的リスクへの予防体制がない

立枯れ木の倒壊によって太陽光パネルが破損した例をお伝えしましたが、太陽光パネル以外にも、敷地内に電柱型の自営送電線がある場合、同様に倒木リスクがある状態といえます。建設から時間が経つにつれ周辺の環境が変化しているため、このような土木的観点でのチェックも自然の中に立地する大規模発電所には必要です。

フェンスの設置は改正FIT法において義務付けられていますが、事故予防・防犯の観点だけでなく獣害リスクに対する対策にもなっています。ただし、上述の通り、出やすい野生動物については立地地域によって異なります。場合によって地元の猟友会のような知識保有者の意見を聞くなど、周辺環境に合わせた対策を検討しましょう。

一度汚れてしまった太陽光パネルに対しては、定期的な洗浄が発電量の低下を最小限に抑える上で有効です。鳥のふんや樹脂のようなこびりついて除去が難しい汚れに対しても対処できます。

太陽光パネルの適切な洗浄頻度は、発電所によって異なります。発電量の低下が引き起こされるまでのサイクル期間や都度のメンテナンスなどで洗浄が必要とされる場合に行うなど、いくつかの観点からの見極めが大切です。

こちらの記事では、太陽光パネル洗浄効果や適切な頻度に関して実施したセミナーの記録をまとめておりますので、ぜひあわせてご覧ください。

【あわせて読みたい】太陽光パネル洗浄は収益回復に繋がるか?O&Mと洗浄の専門家が語る太陽光パネル洗浄の流れと有効なケース

適切に太陽光発電設備を管理して虫や小動物、植物による被害を防ごう

太陽光発電設備の発電被害には虫や小動物、植物によるものがあります。どのような被害事例があるかあらかじめ把握することで、未然に被害を防ぐことが可能です。日々の運用の中で、自分たちの太陽光発電設備にはどのような虫・小動物・植物による被害のリスクがあるかチェックしておきましょう。

基本的な対策としては、除草や目視点検などによる定期的な設備周辺環境のメンテナンス、汚れてしまったり虫や小動物・植物に侵入されてしまった場合はそれの除去や太陽光パネルの洗浄が挙げられます。ただし、どのような頻度で行うべきかは発電所毎に異なるため、専門家と相談しながら決めることが大切です。

弊社では、太陽光発電設備のメンテナンスを含めたさまざまな業務に対応しています。メンテナンス面では、除草や、太陽光パネルの洗浄、土木パトロール・補修工事など幅広いサービスを提供しています。プロとしてのノウハウを活かし、売電損失を最小限に抑えるための保守・運用をご提案いたしますので、ぜひご相談ください。

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