太陽光パネル洗浄は収益回復に繋がるか?O&Mと洗浄の専門家が語る太陽光パネル洗浄の流れと有効なケース
2024年10月、幕張メッセにて開催されたPX EXPOにて、再生可能エネルギーのO&M事業を手掛ける自然オペレーションズ株式会社と、パネル洗浄を専門に事業を展開する太陽光パネル洗浄本舗が共同セミナーを実施しました。パネル洗浄が有効なケースや事例について語ります。
太陽光パネルの洗浄は本当に効果があるのか?
今回のセミナーで語られた、「よくある3つの質問」。1つ目は、太陽光パネルの洗浄を経験された方からも、そうでない方からも多く寄せられる最も多い「太陽光パネルの洗浄には本当に効果 があるのか?」という質問です。
発電量が低下したときの年度比較イメージ
(オレンジ:昨年の発電量、青:今年の発電量)
多くの発電事業者やアセットマネージャーは、昨年と今年の同月の発電量データを比較し、発電量が振るわないときに「もしかしてパネルが汚れている?」と気になるのではないでしょうか。
パネル洗浄すべきかの事前診断
自然オペレーションズや太陽光パネル洗浄本舗が問い合わせを承ったのち、まず必ず行うのが現地調査です。
本当にパネルが汚れているのか、汚れていないのに発電量が落ちていないかなど、現場を見ることで一つ一つの原因を想定し、検証します。
倉澤「計測機器に異常がないか。一例として、日射計は5〜10年ほど使用していると少しずつ値がずれてきますが、校正作業をできているかが重要です。続いて、接続箱・パワーコンディショナ・ケーブルなどに異常がないか。それでも異常がなければ太陽光パネルというように、段階的に原因を考えていくのが大切です」
そして、建設直後には伸びていなかった木や草が成長し影の原因となったケースや、落ち葉のような付着物が一時的な原因となって発電量が落ちていないかなどを踏まえた上で、汚れに原因があるのかを考えるのがよいと言います。
つまり、太陽光パネル洗浄は発電量改善に向けた取り組みのうちの1つであり、いきなり洗浄を実施するのは早急な判断かもしれません。
事例を元に「洗浄が有効なケース」を考える
太陽光パネルの洗浄が有効なケースについて山田氏はこう語りました。
山田氏「太陽光パネル表面の汚れがパネルに対し影を作り、継続的に発電を阻害しているのであればパネル洗浄が有効な状態です。パネル洗浄は元々あるものの効率をさらに上げるためのものではなく、汚れで落ちてしまった効率を元通りにするものです」
つまり、「マイナスをゼロにするのが太陽パネル洗浄」であり、その考えを持った上でパネル洗浄を検討する上で重要であるということです。
太陽光パネルの汚れの原因について山田氏から語られた内容によると、パネルの汚れに関する相談のうち、1番多いものが花粉、次いで樹液、その次に鳥の糞や虫の産卵などの周辺環境によるものが多いとのことです。
しかし、事例としてこのような原因が単発で発生しているケースは珍しいと言われています。例えば、花粉が積もっている場合、発電所周りが木で囲まれているケースが多くあります。その場合、木の近くは樹液に汚れが強いなどが考えられるため、「太陽光発電所全体で見てどのような原因が考えられるのか」を想定して対策を講じる必要があります。
太陽光パネル洗浄をしたのに発電量が増えないことはあるのか?
両者によると、パネル洗浄の事前診断をせず、とりあえず洗浄したが発電量が増えなかったという声も一定数見受けられます。
それは、発電量低下の原因が汚れ以外にある場合です。例えば、落ち葉が原因で発電量が低下している場合、風が吹けば改善される一時的なものであるため、焦って洗浄しても思ったほどの効果が得られない可能性が高くなります。
倉澤「ストリング単位で監視をしていればモニターから原因が送られてくるため、診断しておくのも重要です」
また、発電量低下の原因がわからない場合、一部だけ洗浄する「試験洗浄」も手段の1つです。特別高圧の太陽光発電所を全体的に洗浄すると、場合によっては200万円以上の費用がかかります。もちろん、明らかに汚れで発電量が低下していると考えられる場合はそのまま洗浄しても問題ありませんが、そうでない場合や初めて取り組む場合は、試験洗浄をお薦めします。
太陽光パネルはどれくらいの頻度で洗浄する必要があるのか?
3つ目のよくある質問は「太陽光パネルはどれくらいの頻度で洗浄する必要があるのか?」「建設後何年くらいで洗浄するのが良いのか」というものです。
発電所次第で異なるものの、倉澤からは「PR値が下がるサイクルと、売電損失額で考えるのが一つの目安」とお伝えしました。
発電量が低下するサイクルの簡易イメージ
(青:発電所Aは1年、オレンジ:発電所Bは3年サイクルでPR値が6%下がると仮定)
上記の画像は、発電所の発電量の変化について2パターン示したグラフですが、発電所Aは1年で発電効率が下がり洗浄しては元の数値に戻ることを繰り返しています。一方で発電所Bは、3年かけて緩やかに発電量が低下しています。
必要な洗浄頻度は発電所により変化するため、このPR値が下落するサイクルとFIT価格等を踏まえた年間収支を概算で比較することが一つの目安となるでしょう。
また、太陽光パネルを洗浄する期間についてのもう一つの考え方として、「ある程度の期間が経ち、洗浄が必要であると判断された場合はその時点で実施するのがよく、2回目以降は時期を見定めていくのが考え方の1つとしてある」とお伝えしました。
ほかにも、木に囲まれている発電所の場合は花粉の時期が過ぎた頃に洗浄し、発電の効率が良い夏を迎えることも戦略のひとつです。さらには、雨が少なくて汚れが落ちづらいことから秋頃に洗浄するのも1つの方法として挙げられます。
このように、洗浄ひとつ取っても発電所ごとの状況に合わせて柔軟に対応することが求められます。
まとめ
前提として、太陽光パネル洗浄によって全ての発電所の発電量が増加するわけでもありません。事前診断による原因の調査と見極め、必要に応じて試験洗浄を検討することが重要です。
また太陽光パネル洗浄は、「マイナスをゼロにする」ためのもので、複数あるうちの発電量改善に向けた取り組みのうちの1つでしかありません。発電量が減少している兆候があれば、O&M事業者と連携して原因を突き止め、太陽光発電量によるロスを最小限に抑えることが大切です。
もし発電量の減少で悩まれている方がいれば、ぜひ事前診断も含めて太陽光パネル洗浄をご検討ください。