【2024年最新版】太陽光発電の出力制御とは?最新ルールや必要な理由、オンライン代理制御まで解説!

 

少し前まで九州電力管内だけで実施されていた太陽光発電の出力制御ですが、2024年現在は風向きが変わってきています。2022年から九州以外のエリアでも次々に出力制御が実施され、国内どのエリアでも出力制御が起こり得る状況となりました。

出力制御がかかるとその分の売電収入が減るため、自身が運用する太陽光発電所が対象なのか、どのようなルールで実施されるのかは必ず把握しておきたいところです。

この記事では、太陽光発電の出力制御の最新ルールや、オンライン代理制御まで広く解説していきます。

※本記事は昨今の動向を受け、2024年10月21日に更新いたしました。

 

太陽光発電の出力制御とは

そもそも太陽光発電の出力制御とはどのような制度で、なぜ実施する必要があるのでしょうか。まずは、出力制御の制度概要と仕組み、実施状況や必要性について解説していきます。

出力制度の制度概要・仕組み

出力制御とは、電力会社から発電事業者に対して発電所の発電量を一時的に抑える、もしくは停止するよう要請できる制度のことです。このことから、出力制御は出力抑制と呼ばれることもあります。

出力制御がされている間は売電できず、それに対する補償は国からも電力会社からもありません。つまり、出力制御がかかると、単純にその時間の分だけ売電収入が減ることになります。

そして、FIT認定を受けている太陽光発電は、すべての発電所が出力制御の実施に同意しています。電力システム全体の需給バランス維持の観点からも、電力会社からの出力制御要請は断ることができません。

出力制御は太陽光発電のみならず、風力発電などの再生可能エネルギーによる発電、火力発電や水力発電などすべての発電設備が対象です。各発電所の特性に合わせて、出力制御の優先順位が決まっています。

再生可能エネルギーのうち、太陽光・風力発電は発電量を調整できない自然変動型電源です。そのため、まずは変動の調整が可能な火力発電やバイオマス発電などから調整され、それでも調整量が足りない場合、太陽光・風力の出力制御がなされます。

出力制御の実施状況

2023年までの間、出力制御は実際にどの程度実施されているのでしょうか。

2018年10月から始まった出力制御ですが、2021年までは太陽光発電が多く需要量の少ない九州電力管轄のみで実施されていただけでした。しかし、2022年になってから北海道エリアに始まり、東北、四国、中国と各エリアで立て続けに出力制御が実施されました。

さらに、2023年に入ってからは、中部、関西、沖縄エリアも実施され、 東京電力管内以外の全エリアで出力制御が実施されました。

また、経済産業省資源エネルギー庁は、2024年8月7日に需給バランスを一致させることを目的に、電源の出力制御の順番を定めた「優先給電ルール」を見直す考えを示しました。

結果、FIT(固定買取制度)からFIP(フィードインプレミアム)への移行を促す案が示されており、早ければ2026年度から再生可能エネルギーの出力制御をFIT電源・FIP電源の順にルールを改める考え・方針が出ています。

太陽光発電所や風力発電所は今後も増え続けていくので、短期的には出力制御が少なくなることはなく、むしろ増える可能性が高いといえるでしょう。

FIP利用の事業者は優遇される?

2024年9月時点でFIP利用の事業者が優遇されるという情報は確定していません。第66回再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会にて、事務局から提案された優先給電ルールの見直しによって見込まれるのは、主に以下の2つです。

  • FIP電源(太陽光・風力)は当面、出力制御の頻度が低下する
  • FIT電源は出力制御の頻度が増加する

※FIP電源でも、余剰が特に大きい日や制限回数が多いエリアでは、FIT電源で下げ代が足りなくなった場合に制御対象となります。

現時点では、優先給電ルールの見直しによってFITからFIPへ移行を促す案の提示に留まります。今後も、優先給電ルールに関しての情報が更新される可能性はあり、定期的に確認いただくことをおすすめするとともに、このメルマガ等でも引き続き関連情報を発信してまいります。

また、直近の2024年9月30日に経済産業省から、再生可能エネルギーの発電と蓄電池を併用する事業者への支援を拡充する案が出されました。FIP事業者を対象に、交付する補助金額を現状の2倍程度に増やすとのことです。

現在、FIP事業者に対する上乗せ額は初年度が1円程度で、徐々に支援規模を縮小しつつ、数年間上乗せが続く仕組みです。初年度を含め、3〜5年ほど、現状の金額から倍増する案が出ています。2024年度末までに専門家の意見を踏まえつつ案を固めていく方針です。

 

出力制御はなぜ必要か

出力制御は、発電事業者からすれば売電収入が減ってしまう制度ですが、そもそもなぜ必要なのでしょうか。それは、電力の消費量(需要量)に対して供給量が増えすぎると、安定した電力供給が難しくなり、最悪の場合は大規模な停電に陥る恐れがあるためです。

電力には同時同量という考え方があり、需要量と供給量のバランスをその時々で取らなければなりません。

必要な電力量に対して、供給量が不足することが好ましくないだけでなく、逆に供給量が需要以上に多すぎ、発電した電気が余ってしまうのもよくありません。

例えば、河川の水の量で考えてみると、雨が降らず河川の水が少なすぎると生活用水が確保できない一方で、河川が決壊するほどの豪雨で洪水が起こるのも困ります。電力の同時同量の考え方は、これと感覚的に近いのかもしれません。

電力会社は24時間365日、常に電力需要量の監視・予測をしながら必要な電力供給量を調整しています。寒波や猛暑で冷暖房の利用が増えるなどして電力の需要量が増える場合は、火力発電などを稼働して供給量を増やしているのです。

それでも足りない場合は、エリア間で電力の融通を行います。災害や発電所の故障などにより、電力の融通を行ってもなお足りない場合は節電の呼びかけ、場合により計画停電で需要を減らしてバランスさせます。

一方で、供給量が過多になる場合、需要は突然増やせません。そのため、優先給電ルールに沿って、揚水発電・電気の蓄電や出力制御を行って発電量を減らすことになります。

つまり、供給量が需要量を上回った際、電力システム全体の運用を守るために出力制御が存在しているというわけです。

 

2024年における太陽光発電出力制御の動向

2024年における太陽光発電出力制御の動向はどのようなものなのでしょうか。以下の表は、各エリアにおける2023年度までの再生可能エネルギー出力制御の実施状況、2024年3月末時点での年間出力制御率の見込みをまとめたものです。

エリア2022年2023年2024年(前年比:増加、減少)
北海道エリア0.04%0.01%0.2% (0.19%
東北エリア0.45%0.82%2.5% (1.68%
中部エリア0.2%0.6% (0.4%
北陸エリア0.56%1.1% (0.54%
関西エリア0.1%0.7% (0.6%
中国エリア0.45%3.6%5.8% (2.2%
四国エリア0.41%1.8%4.5% (2.7%
九州エリア3.0%8.3%6.1% (2.2%
沖縄エリア0.08%0.27%0.2% (0.07%

再生可能エネルギーの導入拡大によって、出力制御エリアは全国に拡大しています。表でみても、九州や沖縄といった一部のエリアを除くと、全体傾向として出力制御率が高まっていることがわかります。

 

太陽光発電所の出力制御3つのルール

ここからは太陽光発電の出力制御に絞ってご説明します。太陽光発電所の出力制御は、次の3つのルールのいずれかが適用されます。

  • 旧ルール
  • 新ルール
  • 無制限・無補償ルール(指定ルール)

上記の3つのルールで異なる主なポイントは、出力制御を実施できる時間です。基本的に電力会社は、ルール上設定された時間までは売電収入の補償なしで出力制御を実施できることになっています。

ここからは、太陽光発電所の出力制御における3つのルールを解説していきます。

旧ルール

旧ルールは、年間30日を上限に出力制御を無保証で要請できるルールです。後述する新ルールが出る前に設定されたルールのため、旧ルールと呼ばれています。また、上限時間から30日ルールとも呼ばれます。

新ルール

旧ルールに変わり2015年のFIT制度改定から取り入れられたのが、年間360時間を上限に時間単位で出力制御を実施する新ルールです。新ルールは、上限時間から360時間ルールと呼ばれることもあります。

旧ルールでは、1日に出力制御された時間にかかわらず、出力制御されればその日を1日とカウントしていました。そのため、上限は30日で設定されているものの、日付単位なのでそこまで綿密な形で運用できているとは言えません。時間単位で出力制御ができる新ルールが設定されたのはこのためです。

無制限・無補償ルール(指定ルール)

制御時間の上限がなく、また補償なしの出力制御を実施できるのが、無制限・無補償ルールです。当初は国から指定された電力会社管内のみが対象だったため、指定ルールと呼ばれていました。2021年4月以降、指定電気事業者の枠組みが撤廃され、どの電力会社の管轄でも無制限・無補償ルールを適用できることになっています。

【地域別】適用ルールの決まり方

出力制御でどのルールが適用されるかは、エリアと接続契約の締結時期によって異なります。ここでは、各エリアの電力会社ごとにどのルールが適用されるのか、確認していきましょう。

エリアは以下の区分で解説します。

  • 北海道電力エリア、九州電力エリア
  • 東北電力エリア
  • 東京電力エリア、中部電力エリア、関西電力エリア、沖縄電力エリア
  • 北陸電力エリア
  • 中国電力エリア
  • 四国電力エリア

また、基本的に今から10kW以上の太陽光発電所を設置する場合は、どの電力会社の管轄であっても無制限・無補償ルールが適用されるので理解しておきましょう。

※ここでは出力500kW以上の太陽光発電に絞って解説します。

北海道電力エリア、九州電力エリア

北海道電力エリアと九州電力エリアは、以下の通り2015年1月25日で旧ルールと無制限・無補償ルールが切り替わり、新ルールの適用はありません。なお、起点となる日付は北海道電力エリアが接続申込、九州電力エリアは契約締結となる点が異なります。

ルール上限時間(補償なし)期間
旧ルール30日2015年1月25日以前
新ルール360時間
無制限・無補償ルール無制限2015年1月26日以降

東北電力エリア

東北電力エリアも北海道電力・九州電力エリアと同じく、旧ルールと無制限・無補償ルールのみですが、起点となる日付が異なります。

ルール上限時間(補償なし)期間
旧ルール30日2014年9月30日以前
新ルール360時間
無制限・無補償ルール無制限2014年10月1日以降

東京電力エリア、中部電力エリア、関西電力エリア、沖縄電力エリア

中三社と呼ばれる東京電力・中部電力・関西電力エリア、および沖縄電力エリアの4社は同じ形で対象ルールが決まります。

ルール上限時間(補償なし)期間
旧ルール30日2015年1月25日以前
新ルール360時間2015年1月26日〜2021年3月31日
無制限・無補償ルール無制限2021年4月1日以降

北陸電力エリア

北陸電力エリアは、旧ルールと新ルールの切り替え日が上記の中三社+沖縄電力エリアと同じ2015年1月25日となっています。ただ、無制限・無補償ルールの適用が2017年1月24日以降と早く行われました。

ルール上限時間(補償なし)期間
旧ルール30日2015年1月25日以前
新ルール360時間2015年1月26日〜2017年1月23日
無制限・無補償ルール無制限2017年1月24日以降

中国電力エリア

中国電力エリアも北陸電力エリアと同じく旧ルールと新ルールの切替日が2015年1月25日となっていますが、無制限・無補償ルールが2018年7月12日以降となっています。

ルール上限時間(補償なし)期間
旧ルール30日2015年1月25日以前
新ルール360時間2015年1月26日〜2018年7月11日
無制限・無補償ルール無制限2018年7月12日以降

四国電力エリア

四国電力エリアは、他の電力会社エリアと若干異なる期間でルールが適用されます。

ルール上限時間(補償なし)期間
旧ルール30日2014年12月2日以前
新ルール360時間2014年12月3日〜2016年1月22日
無制限・無補償ルール無制限2016年1月25日以降

 

太陽光発電の出力制御を実施する3つの方法

出力制御は基本的に出力制御機能付きのパワーコンディショナ(以下、パワコン)、そして出力制御ユニットで実施します。具体的にどのように出力制御をかけるのかは、インターネットの接続状況を含めて変わり、主に次の3つの方法が取られます。

  • オンライン制御
  • オフライン制御
  • オンライン代理制御

ここでは、それぞれの方法について詳しく解説していきます。

オンライン制御

オンライン制御は、電力会社からの出力制御の要請をインターネット経由でパワコンに指示して制御する方式です。出力制御を実施するために現地で手作業が必要ないため、オンライン制御は自動制御とも呼ばれます。

出力制御する時間帯や制御量などの条件は、電力会社側のサーバーにスケジュールとして保存されています。オンライン制御では、出力制御ユニットやパワコンがこのスケジュールを受信することで適切な出力制御が働く仕組みです

ただ、天候や需給バランスによって出力制御すべき時間帯や制御量は変動するため、スケジュールはその都度更新されていきます。このスケジュールを更新スケジュールと言い、オンライン制御では常に最新のスケジュールで出力制御が実施可能です。

出力制御は大きな電力需要を持つ工場や事業所が休みとなる週末・連休に特に発生しやすいため、オンライン化することにより、制御時間が比較的短時間で済むのみならず、休暇期間に手動制御をしにいく手間が省けます。
当社ではパワーコンディショナの改造によるオンライン化工事サービスを提供していますので、まだオフラインの発電所のオーナー様はぜひご検討ください。

オフライン制御

オンライン制御とは逆に、出力制御ユニットが無い、もしくはインターネット接続されないオフライン状態での制御方式がオフライン制御です。

オフライン制御には、大きく次の2種類があります。1つ目が旧ルールでの手動制御、2つ目が指定ルール及び無制限・無補償ルールでの固定スケジュールでの制御です。

手動制御は、電力会社から出力制御がメールで要請され、その条件に合わせて現地でパワコンを手動操作して出力制御を実施します。一方の固定スケジュールでの制御では、あらかじめ電力会社が決めた1年間の出力制御のスケジュール(固定スケジュール)をインストールして出力制御が実施されます。最初のインストール作業が終われば制御自体は自動で働くため、手動制御のような手動での操作が不要です。

固定スケジュールでは、更新スケジュールのように日々の電力需給状況に合わせて出力制御の時間や量を変えられません。そのため、安全を見た形で日程や制御量が設定されており、オンライン制御よりも出力制御される量が多くなるようになっています。

オンライン代理制御

オンライン・オフライン制御で運用が進んでいる中、2022年4月から追加された出力制御の方式がオンライン代理制御です。オンライン代理制御では、パワコンを手動制御するしかない発電事業者が、オンライン制御の発電事業者に代理で出力制御してもらいます。

手動制御の発電事業者は出力制御を行わない代わりに、出力制御で得られないはずだった売電収入を対価として代理の発電事業者に支払う仕組みです。このため、オンライン代理制御は経済的出力制御とも呼ばれます。

オンライン代理制御に関しては、以下の記事でも解説しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。

【あわせて読みたい】オンライン代理制御とは?対象範囲やメリット・デメリットなどを解説
【あわせて読みたい】【2024】オンライン代理制御導入後の出力制御方法 ~精算までの流れや精算比率も紹介~

本来であれば、系統運用の最適化や再エネ利用の最大化の観点から、すべての再エネ発電設備がオンライン化され制御されることが理想的ですが、小規模発電設備も含めた設備投資を考えると、それは現実的ではありません。そのため、オンライン制御事業者に出力制御を実施してもらい、その売電損失を、経済的に公平にオフライン制御事業者が負担することとなりました。精算のタイミングは電力会社ごとに異なりますが、各月の精算比率に従って、おおむね2か月遅れて減額精算されることに注意しましょう。

 

まとめ

出力制御は、電力の安定供給を守るために欠かせない重要な制度となっています。一方で、発電事業者の立場からすると、発電できない時間帯の売電損失がどうしても気がかりです。

また、これまで出力制御があまり起こらなかったエリアでも、原発の稼働といった要因により回数が増えていく可能性があります。

「今後のオペレーションに不安がある」「オンライン化の方法や費用が知りたい」など、お困りの方は当社までお問い合わせください。

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