太陽光発電の落雷被害とは?リスクや対策方法について解説
太陽光発電設備を運用する上で落雷被害は見逃せない問題です。落雷によって、パワーコンディショナや太陽光パネルの故障・破損が生じたり、通信機器に影響を及ぼしたりします。
この記事では、太陽光発電設備の落雷被害について設備に及ぼす影響を詳しく解説します。なぜ落雷被害が生じるのか、どのように対策すればよいのかまで解説します。
落雷は主に2種類に分けられる
落雷は、1回あたり数千〜1億ボルト、15億ジュール(電気で表すと約400kWh)のエネルギーに達するとされており、非常に大きい威力を持ちます。落雷の種類は、大きくわけて以下の2種類です。
- 直撃雷
- 誘導雷
それぞれの雷がどういったものか詳しく解説します。
直撃雷 | 対象物に直接雷が落ちる
直撃雷は、対象物に雷が直接落ちることです。
雷が設備に直撃すると、電気機器が破損・故障する恐れがあります。また、電気機器や電気回路だけでなく、配線に損傷・破損が生じたり、通信機器に影響を及ぼしたり、といった被害が発生します。太陽光発電設備に直接落雷することもあれば、監視用カメラのポールなど周辺機器に落雷することもあります。
そのため、避雷針を設置したり、避雷器やサージ保護デバイスなどを設けて対策する必要があります。
誘導雷 | 落雷によって生じた電磁波が電気配線に電圧サージを発生させる
誘導雷は、落雷によって生じた電磁波が電気配線などに電圧サージを発生させる現象のことです。電圧サージのエネルギーが大きいと、電気機器に故障や不具合などのトラブルが生じる可能性があります。
太陽光発電所でも、落雷被害の多くは誘導雷とされています。雷の直撃を避けられたとしても、接地系統などから回り込んだ電圧サージが太陽光パネルやパワーコンディショナ、監視装置や集電箱に影響を及ぼすことがあります。また、誘導雷による被害は、目視で分かりづらいのが特徴です。
太陽光発電の落雷による故障のリスク
太陽光発電では、落雷によってどのようなリスクが生じるのでしょうか。ここからは、落雷対策の必要性や落雷が起きやすい地域を詳しく解説します。
落雷対策の必要性
太陽光発電設備は、太陽光を利用して発電するため屋外に設置されます。屋外に設置されると、落雷による故障・不具合のリスクは避けられません。
落雷対策をしなければ、落雷によって太陽光パネル・パワーコンディショナなどの電気機器にダメージを受けるだけでなく、発電量の低下や電気火災などのリスクも伴います。落雷対策をすることで太陽光発電をより安全・安定して運用できるようになるため、後述する落雷対策を行うことが大切です。
落雷が起きやすい地域とは
落雷が生じやすい地域は、気温や湿度の変化が激しく、雷雲が発生しやすい環境が整っている場所です。具体的には、以下の地域が挙げられます。
- 山岳地帯
- 海岸地帯
- 河川や湖沼周辺など水辺に近い場所
また、地形的な要因も落雷の発生につながります。例えば、山頂や屋根の高い場所や、堤防・砂浜・海上などの開けた場所などです。平野部分でも高い場所や塔などがあると、落雷のリスクが高まります。
誘導雷で通信機器にダメージがあれば不具合が生じる
太陽光発電設備への落雷・パネル貫通・破損がなかったとしても、通信機器にダメージがあれば発電に対する間接的な不具合・故障が生じます。例えば、通信機器に故障が生じることで情報が取れなくなるなどです。
太平洋側では4月から9月、日本海側では10月から3月にかけて落雷が増えるため、落雷対策が大切です。以下の都道府県別の年間雷日数のランキングでは、北日本から東日本の日本海側や中部地方、九州南部で落雷日数が多い傾向となりました。通信機器を守るためにも、後述する落雷対策を意識しましょう。
誘導雷による太陽光発電設備・通信機器に生じる影響は、主に以下の通りです。
- パワーコンディショナの故障・破損
- 通信機器の不具合
- 太陽光パネルの故障・破損
それぞれの内容について詳しく解説します。
1. パワーコンディショナの故障・破損
誘導雷によるパワーコンディショナの故障・破損リスクがあります。
パワーコンディショナは、いくつもの系統と接続されているため、誘導雷による電圧サージの侵入経路が複数あります。そのため、落雷被害を受けやすいのが特徴です。
パワーコンディショナが落雷被害を受けると、電力の変換に影響を及ぼすため、発電・売電ができません。太陽光発電システム全体に影響が出るといえるでしょう。
2. 通信機器の不具合
誘導雷は、通信機器に影響を及ぼすことで不具合を引き起こすこともあります。
例えば、通信機器箱内の通信機器などが誘導雷の影響を受けて不具合を引き起こし、発電量が把握できなくなったケース、などです。
目視で故障個所が分かりにくいため、故障・不具合部分の特定に時間がかかります。通信関連であれば通信機器の知識・技術力を有した者の調査や復旧作業が求められます。
3. 太陽光パネルの故障・破損
直撃雷による故障・破損の場合、パネルの外観やパワコン、接続箱を見たらなどの分かりやすい外相異常が見受けられる場合もありますが、パネルフレームの端のアルミ辺が少し焦げている程度の、分かりにくい状態の方が大半です。そうした場合、ストリング電流値やパネルを切り離して開放電流を測定したり、サーモ調査を行って被害範囲を特定します。
一方で誘導雷の場合、落雷が直撃せずに太陽光発電設備に被害を及ぼします。現在では、ドローン関連の技術普及や赤外線カメラ・可視カメラの使用によって損傷個所を見つけやすくなったものの、直撃雷による被害と比較して見つけづらいのが特徴です。
修理をした後も発電量が元に戻らない場合は、こういった見つかりにくい故障が隠れている可能性があります。
落雷のリスク軽減には雷サージ保護装置の設置が大切
落雷による被害は、保護装置を設けることで軽減できる可能性があります。誘導雷は、あらゆる電気配線にで電圧サージを生じさせるため、系統ごとに雷対策が必要です。
ここでは、系統側・太陽電池側・通信配線の雷対策のポイントを解説します。
系統側の雷対策方法
電力系統側の雷対策には、交流電圧に適した保護装置・機器を設置します。高圧避雷器(LA)やサージ保護デバイス(SPD)などです。
高圧避雷器とは、落雷による電気機器への異常電圧を電気機器の絶縁体力より低い電圧まで下げることで、電気機器を保護する装置のことです。一方でサージ保護デバイスとは、雷サージを安全に放出することで、過電圧・過電流による機器の故障を防ぐ機器のことです。
通信配線の雷対策
通信配線の雷対策としては、遠隔監視装置に接続するLANケーブルなどに、対応した保護装置・機器を設置します。各通信回路にサージ保護デバイス(SPD)を設けるなどです。
ほかの対策と同様、通信配線にもSPDを設置することで雷による電圧サージの過電圧・過電流被害を抑えられます
ただし、SPDを付けることで雷被害を完全に防げるわけではなく、SPDがついていても雷による故障は発生することもあります。
太陽光パネル側の雷対策方法
太陽光パネルごとにSPDを装着するのは、設置数が多くなるため現実的ではありません。そのため、接続箱ごとにSPDを設置して被害拡大を抑える方法が考えられます。他にも、DC回路の接地系統を見直す、接地不良箇所を改修するといった対策を取ることできます。
太陽光発電設備が落雷被害を受けたら何をすればよい?
もし、現在運用している太陽光発電設備が落雷被害を受けたらどうすればよいのでしょうか。主なポイントは、以下の通りです。
- 電源を切る
- 落雷被害の確認をする
- 電気設備を点検する
- 保険に加入しておく
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
電源を切る
落雷被害が生じたら、まずは太陽光発電設備の電源を切りましょう。電源を切ることで、システム内に電気が流れなくなるため、二次災害などを防ぎ、被害を最小限に抑えられます。
電源を切って安全を確保できたら、被害状況の確認や電気設備の点検をしましょう。ただし、危険を伴う作業であるため、専門知識を有した技術者が到着するまでむやみに設備に触らないことが大切です。
落雷被害の確認をする
太陽光発電設備の電源を切った後は、落雷被害の状況を確認しましょう。被害があった場合は、施工業者に修理を依頼する必要があります。
直撃雷の場合、目に見える被害が確認しやすいですが、誘導雷による被害の場合は一見で異常がわかりづらいのが特徴です。知識のない方が設備に立ち入ったり触れたりすることで二次災害が生じる可能性があるため、専門の技術者が被害確認を実施しましょう。
また、この後のプロセスである保険申請のためにも、カメラなどで被害状況を記録に取っておきましょう。
電気設備を点検する
落雷後、電気設備の点検を実施して異常がないか確かめることが大切です。ここまで何度かお伝えした通り、誘導雷による故障・不具合は目で分かりづらく、点検することで見つけられる可能性があるためです。
ブレーカーが落ちている箇所がないか、電気配線に断線・破損が見受けられないかなどの確認をはじめ、設備の熱(温度)を測ることも大切です。赤外線などで熱を確認することで、異常な過熱異常を見つけられることがあります。
太陽光発電設備の破損によって稼働を継続できない場合は、経済産業省への事故報告の対象事例としてみなされます。その場合は、電気主任技術者へ被害状況を共有、または点検依頼をし、経済産業省へ遅延なく事故報告してもらうことが重要です。
保険に加入しておく
中長期的な対策として、太陽光発電の保険に加入しておくことも大切です。太陽光発電では、落雷や火災などさまざまな損害に対して保険が適用されます。
例えば、落雷で太陽光パネルが破損したり誘導雷で発電設備に故障が生じた際や、落雷によって火災が生じた場合にも活用できます
ただし、保険を申請するためには、太陽光発電設備の調査・書類作成が必要です。故障箇所の切り分け調査や保証対応の処理に時間がかかるため、被害が生じてから復旧するまで9カ月ほどかかったケースもあります。
保険申請用書類の作成をオーナー様に代わって弊社がサポートすることも可能です。また、保険申請に必要な落雷証明を弊社で取得することもできますので、ぜひご検討ください。
落雷のリスクを防ぎながら太陽光発電設備を運用しよう
この記事では、太陽光発電設備の落雷被害や雷対策のポイントを解説しました。改めて、本記事でご紹介した内容をまとめます。
- 雷は直撃雷・誘導雷の2種類に分けられる
- 太陽光発電の落雷被害で多いのは誘導雷によるもの
- 設備に故障がなくても通信機器が影響を受ければ落雷被害は出る
- 系統に合わせた落雷対策を取ることが大切
- 保険の申請では書類作成や太陽光発電設備の調査が必要
弊社では、太陽光発電設備の保険申請に必要な書類作成をオーナー様に代わって作成するサポートにも対応しています。落雷による保険申請に不安がある方も、ぜひこの機会にご依頼を検討してみてはいかがでしょうか。