太陽光発電所の盗難被害とは|被害の実例や必要な考え方を解説

太陽光発電所の盗難による被害は、例年生じている大きな問題です。報道機関によると(*1)、警察の捜査では茨城県を含む、栃木・埼玉・千葉・群馬県の5圏での太陽光発電所に及ぶ被害総額が約2億7,000万円にのぼるとされています。

この記事では、太陽光発電の盗難被害について、被害の実例や必要な考え方をご紹介します。なぜ盗難被害が生じるのか、どのような太陽光発電所が狙われやすいのかまで解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

太陽光発電所の盗難被害はどうして起こる?

太陽光発電所の盗難被害ですが、警察によると「太陽光発電施設は盗みやすい」と犯人グループが供述したことがNHKのインタビュー(*1)に記載されています。太陽光発電所の盗難が相次いでいる原因をまとめると以下の通りです。

  • 太陽光発電所・施設の数が多い
  • 価格が高騰している銅がケーブルで多用されている

いかに犯人グループに「盗みにくい」「盗むにはリスクが高すぎる」と判断させることが盗難被害を防ぐために必要な考え方といえるでしょう。

 

盗難被害が起きやすい太陽発電所とは

太陽光発電所といっても、種類としては特別高圧・高圧・低圧の3パターンにわかれます。中でも盗難被害が起きやすいのは、高圧の太陽光発電設備です。

まず、低圧の太陽光発電所は規模が小さくケーブルも短く・細いのが特徴です。そのため、リスクに対してリターンが少ないと盗難者が判断し、被害に遭いにくい傾向です。

特別高圧の太陽光発電所では太く・長いケーブルが用いられています。そのため、盗難の対象として挙げられそうですが、以下のような、盗難を妨げるような適切な管理がされていることで被害に遭いにくい傾向です。

  • 警備等、盗難対策が十分に実施されている発電所が多い
  • 常駐者がいる発電所が多いため早期発見の可能性が高い
  • 発電所までのアクセスが少なく主要地点まで行くのに時間がかかる

結果として、高圧の発電所が盗難者・犯人グループから盗みやすいと判断されて被害に遭いやすい傾向があります。つまり、高圧太陽光発電所の設備を保有・運営している方は、盗難者に対して「盗みにくい」「リスクが高すぎる」と判断させるための防犯意識が大切といえます。

太陽光発電所を運用する方は、主に不動産投資や管理を事業として行なっているオーナー様以外にも、主力事業が別にありFIT制度を活用して新規事業として発電所を所有しているオーナー様も多くいます。防犯意識の低さが太陽光発電所の盗難被害につながる可能性は十分にあります。

 

太陽光発電所の盗難で狙われやすい設備

太陽光発電所の盗難で狙われやすいのは、銅線ケーブルです。銅線ケーブルが狙われる背景には、近年の銅の価格上昇が挙げられます。

World Bankのデータ(*2)によると、2020年から2023年までで、銅の価格取引は約1.38倍になっているとのことです。そのため、換金目的に銅線ケーブルが標的にされているのです。

 

実際に起きた太陽光発電所の盗難被害の実例

太陽光発電所の盗難被害は他人事ではありません。

例えば、茨城県内の太陽光発電施設の被害は2023年中の8月末までで886件報告されています。茨城県を含む、栃木・埼玉・千葉・群馬県の5県での太陽光発電所に及ぶ被害総額は約2億7,000万円にのぼるとのことです。

ここで「関東地方の太陽光発電所が被害に遭いやすい」と考えるのは実態と異なり、全国的に被害が拡大していることに注意が必要です。例えば、滋賀県でも複数の箇所でキロメートル単位での銅線盗難の被害が報道されています。(*3)

太陽光発電所の盗難被害が増加する中で、事業者が契約している損害保険会社でも対応に追われているという情報も見受けられます。太陽光発電部門の保険事業において、近年急増した盗難への保障の影響で赤字が出ており、「壊れたら、盗まれたら保険でカバーしよう」というこれまでの考え方では、復旧できずに今後の発電事業が成立しなくなる恐れがあります。
また、盗難被害でケーブル切断が発生してから復旧されるまでの間、本来であれば売電により得られるはずだった収益が同時に損失することとなります

「これまで被害に遭わなかったから」と過信せず、「最初から被害に遭わない」という発想に切り替え、盗難被害を防ぐための防犯対策の強化や損害対策を備えておきましょう。

 

太陽光発電所の盗難被害の対策で必要な考え方

太陽光発電所の盗難被害は設備を設置している上で考えなければならないリスクです。では、太陽光発電所の盗難被害対策で必要な考え方はどのようなものでしょうか。

盗難被害を防ぐための防犯対策の強化で必要な考え方は、以下の通りです。

● 太陽光発電所の設備設計面で必要な考え方
● 太陽光発電所の運営面で必要な考え方

それぞれの内容について詳しく解説します。

 

太陽光発電所の設備設計面で必要な考え方

太陽光発電所の設備設計面で必要な考え方をまとめると以下の通りです。

  • 太陽光発電所の防犯対策が外から見えるようにする
  • 侵入者に対して盗難を実施しづらくするための設備環境を整える
  • 配線をなるべく露出させないようにする

参照:太陽光発電協会(JEPA)「太陽光発電設備のケーブル盗難対応について(注意喚起)」

太陽光発電所の設計面で大切なのは、ケーブルが盗まれづらい環境を整えることです。ケーブル自体を盗まれにくくしたり、ケーブルを含めた太陽光発電設備自体に近づきにくくしたりといった配慮の工夫を施すのもよいでしょう。

また、「太陽光発電施設は盗みやすい」という盗難者の考え方が太陽光発電所の盗難被害にもつながっています。そのため、盗難者側が「近づきたくない設備」「盗むにしてもリスクが高すぎる」と判断するよう、太陽光発電設備以外でのセキュリティ面でも工夫を施してみましょう。

 

太陽光発電所の運営面で必要な考え方

太陽光発電所を運営する面で必要な考え方をまとめると以下の通りです。

  • ケーブルを中心に異常時検知の工夫を施す
  • 自社だけで盗難を防ごうとするのをやめる
  • 警備会社・警察との連携を図る
  • 盗難が生じた際の対策を決めておく

太陽光発電所の設備・設計面で施したケーブルの盗難対策だけでなく、異常が生じた際に迅速に検知・対応できるよう工夫しておくことも大切です。盗難者側が「盗みづらい」「リスクが高すぎる」と判断して盗難しなくなる、盗難しようとしてもすぐに対処できる環境を整えてみてください。

また、自社だけで対策が難しいと判断した場合は、自社だけで盗難を防ごうとするのをやめてみるという考えも大切です。窃盗団に気付いたとしても、日常の維持管理を行っている方はあくまで一般の方々であり、不用意に近づくことは大きな危険を伴います。プロの警備会社、警察との連携を前提に考えましょう。

 

もし太陽光発電所の盗難被害に遭ったらどうすればよい?

まずは警察に通報し、被害状況を正確に把握しましょう。一度盗難にあった発電所は繰り返し盗難にあう傾向が見られます。外部の警備会社、O&M会社に管理を委託している場合は同様に連携しましょう。

もし、太陽光発電所の盗難被害に遭った場合、保険が適用される可能性があります。ただし、盗難・防犯対策などが十分にできていない場合、保険が適用されない可能性もあるため注意が必要です。また、複数回の盗難も適用外となる場合があります。

JUWI自然電力オペレーションでは、太陽光発電の盗難の現状や防犯の考え方について、保険会社様、警備会社様等、多角的な視点からこの問題を考えるセミナーを実施します。太陽光発電の盗難被害を防止するために必要な情報にご関心のある方は、ぜひこの機会にセミナーの参加をご検討ください。

 

まとめ

この記事では、太陽光発電所の盗難被害について解説しました。改めて、この記事でご紹介した内容をおさらいしましょう。

  • 太陽光発電所の数の多さ・人目のつかなさが盗難被害の多さにつながっている
  • 自社は大丈夫と過信せず、防犯対策・盗難対策の強化を図ることが大切
  • 対策は自社のみで無理に対応しようとせず、警察、プロの事業会社との連携を視野に入れる

太陽光発電所の盗難被害は、盗難者・犯人グループ側が「盗みやすい」と判断していることが問題として挙げられます。盗難者側が「盗みづらい」「リスクが高すぎる」と判断して太陽光発電設備に近付きづらい環境を整えることが大切です。

弊社が実施するセミナーでは、保険会社、警備会社、O&M会社の視点から盗難の現状や盗難防止の考え方をお伝えします。盗難に詳しいスピーカーが現場の最新情報をお伝えしますので、この機会にぜひお申込みください。

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参考資料:
*1 NHK「被害額2億7000万円も… 各地で狙われる太陽光発電」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231025/k10014234411000.html

*2 World Bank: Commodity Markets
https://www.worldbank.org/en/research/commodity-markets

*3 NHK「滋賀 東近江の太陽光発電所で1kmの銅線ケーブル盗まれる」
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20231223/2000080725.html

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